分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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マンガンエアロゾルの現場分析を目指したナノ薄膜試験紙の開発
岸本 悠吾高野 景子高橋 由紀子
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2021 年 70 巻 7.8 号 p. 443-449

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抄録

作業環境中のマイクロメートルサイズのマンガン微粒子を対象として,金属含有エアロゾル微粒子の現場分析を目指した前処理と検出を同時に行う試験紙を提案する.Mn2+イオン用の比色試薬2-(3,5-ジブロモ-2-ピリジルアゾ)-5-(ジエチルアミノ)フェノール(2-(3,5-dibromo-2-pyridylazo)-5-(diethylamino)phenol,3,5-diBr-PADAP)をナノ粒子化し薄膜としてメンブレンフィルター表面に保持させた膜を基にして,pH緩衝成分である0.05 mol L−1ホウ砂を含んだ3 wt% ゼラチンゲルをメンブレンフィルター全体に含侵させ,さらに酸化マンガン微粒子を還元溶解しMn2+とするための0.1 mol L−1 L-アスコルビン酸を含んだ5 wt% ゼラチンゲルを3,5-diBr-PADAPナノ粒子薄膜層の上からコーティングした.マンガンエアロゾルの再現は困難であるため,平均粒径が約1 μmのMn3O4微粒子を約2.3 μmのベーマイト微粒子を用いて任意の割合で希釈した混合粉体をメンブレンフィルターに接触させることで試験紙を評価した.この方法で検量線を作成したところ,マンガン微粒子の割合の増加に伴い,オレンジ色から紫色へ変色し,変化が最も鋭敏に現れたL*a*b*表色系のb*で検量線を作成したところ,濃度に対して指数関数的に減少し,検出下限0.02 μg cm−2,定量範囲は0.08〜約1.2 μg cm−2であった.

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© 2021 The Japan Society for Analytical Chemistry
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