2024 年 73 巻 3 号 p. 95-101
本研究では,代表的な温度感受性イオンチャネルであるTRPV1チャネルを活性化するための手法として,近赤外光に応答して発熱(フォトサーマル効果)し,使用後は分解して体外に排泄される生分解性ポリマーミセルを用いた遠隔活性化方法を開発した.フォトサーマル効果を示す色素であるインドシアニングリーン(ICG)を含むポリマーミセル(ICGミセル)は,優れた生体適合性と生分解性を示した.さらに,組織透過性に優れた近赤外(NIR)光照射下で,ICGミセルは優れたフォトサーマル効果を示した.また,抗TRPV1抗体を導入したICGミセルは細胞膜上のTRPV1に対して選択的に結合し,NIR光照射下において神経細胞へのNa+イオン流入の促進と膜電位の上昇が観察された.これらの結果から,本研究で開発したICGミセルは,神経細胞を非侵襲かつ遠隔的に活性化し,神経系の操作・分析を可能にするツールとしての利用が期待される.