分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
インドシアニングリーン内包PEG-b-PLGAミセルを用いる神経細胞の温度感受性イオンチャネルの光温熱操作
山口 弥希尾上 大樹松下 裕太郎上村 真生
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 73 巻 3 号 p. 95-101

詳細
抄録

本研究では,代表的な温度感受性イオンチャネルであるTRPV1チャネルを活性化するための手法として,近赤外光に応答して発熱(フォトサーマル効果)し,使用後は分解して体外に排泄される生分解性ポリマーミセルを用いた遠隔活性化方法を開発した.フォトサーマル効果を示す色素であるインドシアニングリーン(ICG)を含むポリマーミセル(ICGミセル)は,優れた生体適合性と生分解性を示した.さらに,組織透過性に優れた近赤外(NIR)光照射下で,ICGミセルは優れたフォトサーマル効果を示した.また,抗TRPV1抗体を導入したICGミセルは細胞膜上のTRPV1に対して選択的に結合し,NIR光照射下において神経細胞へのNaイオン流入の促進と膜電位の上昇が観察された.これらの結果から,本研究で開発したICGミセルは,神経細胞を非侵襲かつ遠隔的に活性化し,神経系の操作・分析を可能にするツールとしての利用が期待される.

著者関連情報
© 2024 The Japan Society for Analytical Chemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top