2025 年 74 巻 4.5 号 p. 211-217
文化財の多くは木製の保存箱に保存されるが,保存箱中の湿度は変化が少ないことが望まれる.木箱内の湿度変化は,木箱外の湿度変化及び温度変化によって引き起こされる.桐箱及び湿度変化測定用の試料を用いて,木片を通過した水分による保存箱中の湿度変化を簡易的に湿度センサーによって測定し,測定データが拡散方程式に基づいて変化していることを理論的に確認し,拡散係数を求めた.桐箱は板の厚い方が外部の湿度変化の影響を受け難いことが分かった.桐箱に漆を塗るとさらに影響を受け難くかった.桐,杉,檜と黄楊に対して拡散係数を求めた.桐の拡散係数は大きく,黄楊の拡散係数は小さかった.拡散係数に基づいて,保存箱内の湿度変化が少ないと期待できる木材と構造を検討した.