分析化学
Print ISSN : 0525-1931
ケイ光X線によるランタン,セリウム,プラセオジム,ネオジムの分析
高橋 義人浅田 栄一
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1962 年 11 巻 9 号 p. 926-931

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抄録
従来,ケイ光X線による希土類元素の分析法では,L系列の特性X線が利用されていた.このL線に比べてK線は,スペクトルがさらに単純であり,希土類元素相互間の重複がきわめて少ないことなどで多くの利点が予想される.この研究では最近ようやく利用されるようになってきた100kVのX線管球を用いて,ランタン,セリウム,プラセオジム,ネオジムのK線による分析法の検討を行ない,その特長とするところを明らかにした.すなわち,
(1)検量線は,その横軸を全希土類元素中の一元素の重量%で表わし,縦軸をケイ光X線強度比(この報告においては,各元素について含量30%のものを1とした)とすると,この検量線は4元素共通のものとなり,また試料はリン酸塩共沈物,酸化物混合物,ケイ酸塩のいずれかであっても同一の値を示すことになる.
(2)X線エネルギーが高いために,軽元素が混入されてもX線強度は大きく変化しない.酸化ケイ素20%を含む酸化ランタンに対しては,酸化ケイ素±4.5%程度の増減は影響を与えない.
(3)以上の検量線から求めた分析精度は,20%含量で±1.5%,60%含量で±3.0%であるが,イットリウムは数%以内,トリウムはほとんど含まれていないことを条件とする.
ランタン,セリウム,プラセオジム,ネオジムのK系列の特性X線を利用するケイ光X線分析法を検討した結果,実用性のある分析法であることが明らかになった.
また,この分析法の特長および精度は次のとおりである.
(1)上記4元素のK線に対する他の元素の影響は次のとおりである.
すなわち,ケイ素,リンはきわめて弱く,希土類元素が60~100%の範囲で存在するときは±4.5%の添加は無視できる.
希土類元素相互の混合では,他元素の存在量に比例してK線は弱くなる.
イットリウム,トリウムでは,希土類元素に比べていちじるしくK線の強度を弱める.これらの元素を希土類元素と同様に扱っても,その影響が測定誤差の範囲にはいる含量の限度は,イットリウムは全希土類元素の合計量に対し約1.5%,トリウムは約0.2%となる.
(2)検量線は,標準試料としてリン酸塩を共沈させてつくったものを用いても,希土酸化物,酸化ケイ素の機械的混合物を用いても,両者に差は認められない.これは,これら希土類元素の間で相互の吸収係数の差がきわめて少ないことと,上に述べたようにケイ素とリン,酸素などのK線に対する吸収が少ないことの二つの理由によって説明される.
(3)検量線は横軸を全希土類元素中の一元素の含量百分率とし,縦軸を各元素のケイ光X線強度比(この研究では,各元素の含量30%のものを1とした)で表わすと,4元素について重なり合い共通なものとなる.
(4)上記の検量線を用いた場合,分析精度は次のとおり,20%含量では±1.5%(2σ),60%含量で±3.0%(2σ)程度である.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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