抄録
アルミニウムを溶かした水酸化ナトリウム溶液を酸滴定する際に,滴定の途中にコロイド状沈殿を生成し,また電位差滴定曲線は共存するアルミニウムのために複雑な形を呈する.このような溶液を迅速にしかも正確に滴定する方法を検討した.
まず,(1)アルミニウム量が異なっても,溶液中の全水酸化ナトリウム量に相当する変曲点が,常に滴定曲線上に現われることを確認した.(2)滴定反応が当量点に達したのを検出するために,pH指示電極からの電気的な出力信号を微分回路に供給し,二次導関数の変化を電流計に指示させることにした.(3)滴定開始から,電流計が滴定終点を指示するまでの経過時間を測定し,これから全水酸化ナトリウム量を求めた.滴定の所要時間は1~2分間で,約3%以下の相対誤差で定量することができた.