分析化学
Print ISSN : 0525-1931
アーク放電の際の黒鉛中のユーロピウムの蒸発量,蒸発挙動およびその場合のスペクトル線強度について
大沢 久男
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1969 年 18 巻 4 号 p. 482-488

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抄録

黒鉛電極を使用し,アーク放電条件および担体濃度などを種々変えた場合の黒鉛中のユーロピウムの蒸発量,蒸発挙動およびスペクトル線強度の関係を検討した.
試料は高純度黒鉛中にユーロピウム216ppmを酸化ユーロピウムとして混合し,担体としてフッ化ナトリウム0.5~6.0%を加えて調製した.発光には直流アーク法を用い,放電後の黒鉛中のユーロピウム濃度の測定は中性子放射化分析法で行なった.
アーク電流が大になれば蒸発量,陽極温度は増加する.アルゴンふんい気中でユーロピウムのスペクトル線強度は蒸発量に依存した.アーク電流5A,極間3mm,放電60秒の放電条件で,陽極に詰め込んだ試料1mgあたりのユーロピウムの蒸発量は,空気中で7.78×10-8g,アルゴンふんい気中では3.89×10-8gであり,前者では35%,後者では18%が蒸発している.空気中およびアルゴンふんい気中で,陽極温度が同じであるとユーロピウムの蒸発量は等しく,蒸発挙動は類似しているが,ユーロピウム2813.9Åのスペクトル線強度は後者が強い.ユーロピウムとナトリウムの沸点が異なっているにもかかわらず,担体として添加したフッ化ナトリウム中のナトリウムとユーロピウムの蒸発挙動は類似している.空気中およびアルゴンふんい気中で,フッ化ナトリウムを含まない試料中のユーロピウムは,放電時間10秒でも90秒でも蒸発量は変わらない.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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