分析化学
Print ISSN : 0525-1931
有機陰イオンおよび有機配位子の抽出性
小原 人司石橋 信彦
著者情報
ジャーナル フリー

1971 年 20 巻 1 号 p. 65-69

詳細
抄録

第4級アンモニウム塩による有機陰イオンおよび有機配位子の抽出平衡定数を測定し,これらのイオン種の抽出性を支配する要因について検討した.
有機陰イオンの抽出では,第4級アンモニウムイオンとの会合体の生成に関与する陰イオンの種類によって抽出性に差異が認められ,スルホン酸イオンのほうがカルボン酸イオンよりもかなり抽出されやすい.スルホン酸基を有する有機陰イオンではベンゼンスルホン酸イオン<ナフタレン-2-スルホン酸イオン<アントラキノン-2-スルホン酸イオンの順に抽出されやすく,これらの陰イオンの大きさはその疎水性と関係があり,抽出種の有機性の増加とともに抽出平衡定数は大きくなる.水酸基のような親水性置換基の存在は有機陰イオンの抽出性をかなり低下させ,ナフタレン-2-スルホン酸イオン,1-ナフトール-4-スルホン酸イオンおよび2,3-ジヒドロオキシナフタレン-6-スルホン酸イオンの抽出平衡定数logKA-Cl-はそれぞれ3.90,2.59,1.81である.なお,会合しやすいアリザリンレッドSでは,水酸基の存在にもかかわらず抽出されやすいことを認めた.
塩素イオンに対する有機配位子の抽出交換平衡定数は溶媒の極性の低下とともに増大する傾向にあるが,クロロホルム溶媒では塩素イオンとクロロホルムの水素原子との水素結合のため有機陰イオンの抽出性が低下することを認めた.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top