抄録
塩素酸イオンを簡単な操作で迅速に定量する目的で原子吸光分析法の応用を試みた.
試料として,塩素酸カリウムまたは塩素酸ナトリウム単独のもの,塩素酸カリウムに塩化ナトリウム,臭化カリウム,ヨウ化カリウム,臭素酸ナトリウム,ヨウ素酸カリウム,過塩素酸ナトリウム,または過ヨウ素酸ナトリウムが共存するもの,および塩素酸カリウムを含有する火薬の3種類について検討した.
分析操作法は次のように定めた.試料に20%硫酸第一鉄溶液を加えて加熱し,塩素酸イオンを塩素イオンに還元後,6N硝酸を加えて沈殿を溶解させる.ついで暗所で20mg/ml硝酸銀溶液を加えて塩素イオンを塩化銀の沈殿としたのち,No.4のガラスフィルターを用いて濾過,洗浄する.これに一定量のアンモニア水を加えて塩化銀を溶解させ,この溶液中の銀を原子吸光法により定量する.
塩素酸イオンに上記の陰イオンが共存する試料については,臭素酸イオン,過塩素酸イオン以外は最初に硝酸銀を加えて,共存する陰イオンを除去したのち,同様の操作で,また,火薬中の塩素酸カリウムについては蒸留水で溶出させたのち,同様にして定量する.
この方法では共存イオンとして,臭素酸,水銀が測定値に影響を与えるが,その他のイオンは重量比で13倍量存在しても影響なく,15μg程度の塩素酸イオンでも定量可能である.