分析化学
Print ISSN : 0525-1931
チオシアン酸塩及び非イオン性界面活性剤を用いる鉄(III)の吸光光度定量
林 謙次郎佐々木 義明田頭 昭二原田 京子岡村 恵子
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1978 年 27 巻 6 号 p. 338-343

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抄録

非イオン性界面活性剤であるトリトンX-100(アルキル・フェノール・ポリオキシエチレン・エーテル)を用い,鉄(III)-チオシアン酸錯体の呈色の安定化を検討し有用な結果を得たので,鉄の吸光光度定量に応用した。水溶液中で退色するこの赤色錯体は,(8~15)%(v/v)になるようにトリトンX-100を共存させることにより,数時間以上安定に保つことができ,その結果,著しい感度の向上を図ることができた.すなわち,モル吸光係数は1.88×104であり,従来法や1,10-フェナントロリン法に比べて(1.8~2)倍の感度を持つ.妨害についても検討したが,著しい妨害を示す還元性物質の影響は,小過剰の過マンガン酸カリウムの添加により除くことができ,又銅は,銅-チオシアン酸錯体の不安定さを利用して,チオシアン酸添加後,40分で吸光度を測定することにより,その影響を避けることができた.本法は,水中の微量の鉄を簡単,迅速かつ正確に定量できる方法である.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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