1980 年 29 巻 7 号 p. 447-451
高分解能SKα1,2及びSKβスペクトルの化学シフトやプロファイル変化を測定し,石油系ピッチや石炭液化物中の硫黄の状態分析を試みた.SKα1シフトやSKβプロファイル変化の測定結果は,原油の減圧残油を熱処理して得られるピッチ中の大部分の硫黄が,チオフェン型やアリルスルフィド型であることを示唆する.減圧残油の酸化処理生成物の全硫黄分に対するスルホンの割合は,SKα1,2スペクトルの2点でのX線強度比から簡単に求めることができた.又,石炭の液化物であるソルボリシスピッチ中には,溶媒である減圧残油と石炭に由来する有機硫黄化合物及び石炭からの少量の硫酸塩硫黄が存在することが分かった.