分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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1954 年 3 巻 4 号 p. 364-367

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抄録

東大→大阪市大:化学的沈澱法による分離は操作の熟練等を除外しても質的な欠点もあり,やはり抽出,蒸溜,電解,イオン交換,ペーパークロマト等の方法を駆使して行うべきであると思います.たとえば核分裂直後大量の140Ba(140La)の共存下に微量の90Srや239Np等を見出すためには特に問題ではないでしょうか?
大阪市大:御意見に同感です(但し私共は化学的分離法として抽出,蒸溜等も含めて考えております)しかしそこに存在するNuclideの種類によっては古典的な方法の方が有利な場合もありますので一方ではイオン交換樹脂法のような新しい方法をとり入れると同時に他方では古い方法の長所を生かして利用するよう努めるべきかと思います.また普通の化学的分離法に関しては長年月にわたる研究によって完成せられた指導書が定性,定量分析の書物としてどこの研究室にも備えつけられていることが最大の長所であると思います.
静大→東大:イオン交換樹脂による分離が大変効果的に行われておりますが,一般の場合抽出,蒸溜等による分属あるいは定量法も併せ用いて有効であると思われますが御意見如何でしょうか.
東大:分属操作として抽出蒸溜はまだ使用できないでしょう.イオン交換は幸い分属操作が確立されておりますので適用しました.しかし尚改良の余地を多分に認めております.今回イオン交換を積極的に使用しましたのは分属とアルカリ土類,希土ですがこれらに対して現在の所イオン交換にまさる方法は見当りません.
私共は現在Mo,Ru,Ag,Sn,Sb等についてもイオン交換による分離法を確立する計画を持っております.将来は改良進歩した各々の方法を適所に用いることによって充分な結果がえられるでしょうが
静大:私共も抽出法,蒸溜法は捨てがたいように思います.古典的な化学的な分離法は私共の経験では幾多の難点があるように思います.
編集部:各大学の報文中記号がまちまちで,たとえば140Ba,Ba140,Ba140,と区々な記載をしているので困りました.何とか統一して戴けないでしょうか.

© The Japan Society for Analytical Chemistry
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