抄録
富栄養化成分であるNH4+を含む工業排水を,生物学的に脱窒素処理する際の硝化及び脱窒素処理工程水中のNO3-,NO2-及びNH4+を同時定量する方法について研究した.本法は,NO3-とNO2-を定量するための紫外吸光検出器を用いるH+型陽イオン交換樹脂におけるイオン排除クロマトグラフ法と,電量検出器を用いるOH-型陰イオン交換樹脂におけるイオン排除クロマトグラフ法の結合から成っている.これら二つのイオン排除クロマトグラフ法は,NH4+のピークから,H+型陽イオン交換樹脂カラム内での不完全な陽イオン交換に起因する陽イオン(Na+,K+,Mg2+及びCa2+)のゴーストピークを分離するために,内径1mm×長さ10m(内容積:7.85ml)の遅延コイルにより結合されている.1台の送液ポンプ,2連式試料注入器,H+型陽イオン交換樹脂カラム,OH-型陰イオン交換樹脂カラム,紫外吸光検出器及び電量検出器を備えた1台の液体クロマトグラフ装置が用いられた.この装置の2連式試料注入器中に同一の試料を充てんした後,各々のイオン交換樹脂カラム内に同時注入し,10%メタノール-水を用いる溶離により,生物学的硝化-脱窒素処理工程水中のNO3-,NO2-及びNH4+は30分以内に同時定量できた.