分析化学
Print ISSN : 0525-1931
大気中の硫酸,硫酸水素アンモニウム,硫酸アンモニウムの有機溶媒による分別抽出とイオンクロマトグラフィーによる定量
田中 茂吉森 孝幸橋本 芳一
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1983 年 32 巻 12 号 p. 735-739

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抄録

大気中の硫酸化合物(硫酸,硫酸水素アンモニウム,硫酸アンモニウム)の化学形態別定量法として,テフロン濾紙上に捕集した大気中粒子状物質を,有機溶媒(ベンズアルデヒド,2-プロパノール)によって分別抽出し,イオンクロマトグラフィーによって定量する方法を検討した.硫酸,硫酸水素アンモニウム,硫酸アンモニウムの有機溶媒による各物質の抽出率は,ベンズアルデヒドの場合96%, 3.2%, 1.7%となり硫酸のみを分別抽出できることが確認された.しかし,2-プロパノールの場合, 92%, 50%, 4.8%となり硫酸水素アンモニウムの抽出が50%で不十分であり,硫酸水素アンモニウムと硫酸アンモニウムの分別は困難であることが分かった.イオンクロマトグラフ分析はイオンクロマトグラフの試料注入ループにプレカラムを装着することで,有機溶媒の影響を取り除き,硫酸イオンを変動係数2.5%以内で分析することができた.本法を用いて横浜市日吉3丁目において, 1982年9月, 10月, 12月に測定した大気中硫酸ミスト濃度は(0.03~0.1)μg/m3であり,全硫酸化合物中(1.3~6.2)%であり,大気中硫酸化合物のほとんどが中性化していると言える.又,大気採取量40m3の場合,本法の硫酸の検出限界は0.005μg/m3である.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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