分析化学
Print ISSN : 0525-1931
植物中のシュウ酸カルシウム結晶の形態と結晶水
石井 裕子滝山 一善
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1990 年 39 巻 3 号 p. 145-149

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抄録

食用のほうれん草,野草のベゴニア,すいば,あかざなどは葉や茎にシュウ酸カルシウム結晶を含んでいる.植物体では代謝の最終産物で不用有害なシュウ酸をカルシウム塩として固定して無害にしている.これらの結晶に一水和物と二水和物があることを見いだし,結晶の形態から両者を区別することができた.ベゴニアには二水和物が,すいば,あかざには一水和物が,ほうれん草には大部分が二水和物で約20%の一水和物が存在していた.シュウ酸とカルシウムの種々の濃度の溶液を種々のpHで室温で反応してシュウ酸カルシウム沈殿を生成した.試薬濃度と,pHを変化させて生成した場合,更にクエン酸,リンゴ酸,コハク酸などを共存させた場合に粒子の形態に特徴ある,長い六角形板状の一水和物及び八面体を基本とする二水和物の結晶が析出した.これらのことから植物中のシュウ酸カルシウム結晶の一水和物と二水和物の生成条件の一部が解明できた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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