分析化学
Print ISSN : 0525-1931
水酸化テトラメチルアンモニウム分解/黒鉛炉原子吸光法による生体試料中のルテニウムの定量
田村 久恵新井 隆己長瀬 光昌一瀬 典夫
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1992 年 41 巻 2 号 p. T13-T18

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抄録

交流ゼーマン補正黒鉛炉原子吸光法を用いて,ルテニウムレッドかん流により染色したじんの糸球体基底膜(glomerular basement membrane,以下GBMと略記)中のルテニウムの定量法を検討した.試料1mlを25%水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide,以下TMAHと略記)1mlで分解後,水で希釈して10mlとし,2.5%のTMAH溶液とした.検量線溶液はルテニウム標準溶液を試料溶液と同じTMAH濃度に調製した.黒鉛炉の使用回数が増えれば測定値の吸光度に負の影響を与えるが,ピーク面積積分値の場合は比較的小さい.相対標準偏差値(RSD)を4%(ピーク面積積分値0.32において)以内にとどめる使用回数は約110回であり,この範囲内のピーク面積積分値の減少は10%以下であった.前処理操作で使用し残存する生理食塩水のナトリウムによるバックグラウンド吸収の補正は,最適な灰化温度を設定することにより抑制できマトリックス修飾剤の添加は必要としなかった.本法の分析感度は40.4pg,検出限界は5.5ppb,10回の繰り返し測定精度は0.9%,10分おきに30回繰り返し測定した再現性は5.2%,5日おきに3回繰り返し測定した再現性は3.7%,回収率は91~109%であり,任意の1群の試料5検体を分析したGBM結合ルテニウムの定量結果は56.1±5.8μg mg-1 GBM protein,RSD10.3%であった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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