1992 年 41 巻 4 号 p. 163-166
国立環境研究所(NIES)が有機スズ化合物の分析用に調製した海底質標準試料(NIES No.12)中の多元素定量を目的として,機器中性子放射化分析(INAA)を行った.海底質標準試料(50~430mg)は立教大学原子炉により30秒間の短時間照射と12時間の長時間照射を行った.γ線測定は同軸型Ge検出器による通常のγ線スペクトロメトリーのほかGe検出器と井戸型NaI(Tl)検出器とを組み合わせた反同時測定法と同時測定法によるγ線スペクトロメトリーでも行った.57元素の定量を試みて,Snの11.3μg/gをはじめ54元素が定量できた.SnとHgは妨害ピークの影響を避けるために反同時測定法により定量した.Erは同時測定法により定量でき,希土類元素はすべて定量できた.ZrなどはUの核分裂反応の影響を補正して定量した.