1995 年 44 巻 10 号 p. 809-813
酵素反応の基質特異性を調べる上で,動力学的パラメーターであるKmやVmaxの算出は必要不可欠である.非常に高い分離能を有し,しかも極微量の試料を簡便に短時間で分析できる特徴を有するキャピラリー電気泳動(CE)は酵素の基質特異性を調べるための新たな分析法の一つとして期待された.著者らは光合成細菌の呼吸酵素,ジメチルスルポキシド還元酵素(DMSO reductase)の基質特異性を調べるため,CEの分離モードの一つであるミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)による反応溶液中の生成物の微量定量に基づいた活性測定系を構築した.幾つかのピリジン誘導体N-オキシドとアデノシンN-オキシドの8物質を基質として酵素反応にかけ,その反応溶液を直接MEKCにより分析した.その結果,本活性測定系はKmやVmaxの算出に非常に有効で簡便な手段であった.本法によってDMSO reductaseは広範なN-オキシド還元活性を有することが証明された.