1996 年 45 巻 10 号 p. 947-953
サリチルアルデヒドセミカルバゾン型のシッフ塩基は,塩基性溶液中でLa(III)と反応し発蛍光性の錯体を生成するが,塩基性領域では過剰試薬が著しく強い蛍光を発するため水溶液中でのLa(III)の蛍光定量は困難であった.そこでドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを併用する抽出法を検討した.正の電荷を持つLa錯体はクロロホルム中に抽出され,更にクロロホルム中において一部抽出された過剰試薬はほとんど蛍光を発しなかったためLa(III)の定量が可能となった.又,3種類のサリチルアルデヒドセミカルバゾン誘導体について検討を行い,置換基の違いによってLa(III)の定量感度に差が生じる原因について検討した.更に,MOPACの計算により置換基の違い,解離状態の変化により試薬自身の蛍光量子収率の差が生じる原因について電子密度分布,分子軌道関数のエネルギー差から検討を行った.