5-(4-ニトロフェニルアゾ)-7-(4-エチル-1-メチルオクチル)-8-キノリノール(HNEQ)(Fig.1)による亜鉛(II)の抽出平衡及び溶媒効果について検討した.抽出性はクロロホルム<1-オクタノール<MIBK<1,2-ジクロロエタンの順に増大する.HNEQは,8-キノリノールやKelex 100よりも亜鉛(II)に対して高い抽出性を示す.抽出種は,Zn(NEQ)2及び自己付加錯体,Zn(NEQ)2(HNEQ)n(n=1,2)であることが,抽出平衡解析より示唆された.自己付加錯体生成定数(βs,n=[Zn(NEQ)2(HNEQ)n]org/[Zn(NEQ)2]org[HNEQ]norg))及び抽出定数(Kex,n=[Zn(NEQ)2(HNEQ)n]org[H+]2/[Zn2+][HNEQ](2+n)org)は溶媒によって異なる.βs,1及びβs,2の値は,1,2-ジクロロエタンのほうがクロロホルムより大きい.イソブチルメチルケトンや1-オクタノールでは,自己付加錯体の生成は認められなかった.Zn(II)-HNEQ錯体は,可視部に強い吸収を示し,クロロホルム及び1-オクタノール中でのモル吸光係数はそれぞれ5.91×104cm-1mol-11(λmax=522nm)及び8.40×104cm-1mol-11(λmax=543nm)である.
