分析化学
Print ISSN : 0525-1931
螢光X線分析法による金属玩具用塗料中の鉛の定量
液体試料に対する溶媒希釈法について
桃木 弘三松岡 寿人井上 堯夫石川 悦治
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1960 年 9 巻 5 号 p. 432-438

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抄録

わが国より輸出された金属玩具塗膜の含鉛問題(1957年)は鉛検査方法の不備によるところも大きかったが,螢光X線分析法の採用により解決された。この螢光X線分析法を塗膜原料である塗料中の鉛の定量に応用し,塗膜の鉛検査および無鉛塗料使用の指導に基礎をあたえることができた.
この際,方法特有の吸収効果があって鉛の螢光X線強度と濃度の間に簡単な対応がなく,鉛以外のマトリックスの変化にしたがって一々検量線の異なる困難があったが,吸収効果を全く消去する新しい溶媒希釈法を確立することによって簡単で正確な新定量法をつくることができた.このような方法はマトリックスのいかんにかかわらず,また定量元素のいかんにもかかわらず成立するはずで,広い応用発展が見込まれている.この溶媒希釈法により金属玩具用塗料中0.4~7%の鉛を存在量の2.5%の偏差で,また希釈操作を含めても1試料当り約10分間の迅速さで定量することができた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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