日本物理学会誌
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ニュートリノで見る地球の内部(交流)
大谷 栄治
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2006 年 61 巻 6 号 p. 395-400

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抄録

地球ニュートリノはウラン,トリウム,カリウムの崩壊に伴って放出される.これらの元素は地球の熱源であり,地球の進化にとって重要である.地球のエネルギー収支,すなわち,内部で生成する熱と地表面から放出される熱は,地球の熱史と現在の熱的状態,そして地球の未来を予測するために重要である.地殻やマントルのウランやトリウムの存在度は地質学的・地球化学的方法に基づいて推定されている.それによると,これらの元素は大陸地殻に濃集し,核には存在しないと考えられている.この見積もりによると地球内部で生成する熱は地表から宇宙空間に放出される熱の半分程度であり,地球は冷却の過程にあることになる.また,核に放射性熱源がないとすると,核の冷却によって,内核は10〜20億年前に溶融鉄の結晶化によって形成されたと見積もられる.このような地球科学的な推定の妥当性は将来観測の精度が向上すれば地球ニュートリノ観測によって,独立に検証することが可能になる.

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© 2006 一般社団法人 日本物理学会
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