日本物理学会誌
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不安定核構造を映す電子顕微鏡をつくる (実験技術)
若杉 昌徳大西 哲哉須田 利美栗田 和好
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2013 年 68 巻 12 号 p. 810-817

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抄録

100MeV以上のエネルギーまで加速してド・ブロイ波長をフェムト(fm)スケールまで縮めた電子ビームを原子核に衝突させその散乱を観測すると,電子顕微鏡のように原子核の姿形を映し出すことができる.高エネルギー電子ビーム弾性散乱は半世紀以上前に確立された古典的な手法であるが,原子核の密度分布を高い信頼性をもって直接決定できる優れた方法であり,近年の実験技術の進歩にもかかわらずこれに勝る手法は今もって存在しない.それゆえ電子散乱は短寿命不安定核構造研究においては悲願とも言うべき実験であるが,未だかつて誰もそこに近づけた者はいなかった.筆者らはSCRITと名付けた新技術の開発によってそこへ到達できる手法を手に入れた.理研RIBFにおいてこの新技術を搭載した電子散乱実験専用施設が今まさに建設されている.主たる装置群は一部を残して既に稼働しており,SCRIT技術評価試験,電子散乱試験,および不安定核生成試験を成功させ,目標の背中をすでに捕らえている.この期に本誌上を借りてSCRIT技術および新施設の詳細を紹介する.

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© 2013 一般社団法人 日本物理学会
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