日本物理学会誌
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初期値問題の差分近似の理論
飯野 理一
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1970 年 25 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

§1では線形偏微分方程式の初期値問題に対する差分近似の安定性理論を, 定数係数の場合を中心に紹介する。実際上は差分近似の良さとか, 数値計算上の経済性とかの切実な問題があり, 個々の問題につき差分近似のとり方に工夫がなされる必要があるが, この解説では, この種の問題に直接には触れず, 差分近似解の真の解への収束のための判定を与える安定条件についてだけ述べてある。数学の通例(弊?)にしたがって, 可成り一般的な形式で記述してあるので, 差分理論の入門を実例と共に巧妙に解説してある寺沢寛一編: 自然科学者のための数学概論(応用編)B第4, 5章(藤田宏著)の併読を奨めたい。また衝撃波等に関心をもつ研究者を考慮して編集された物理学論文選集154, 応用数学Vは理論, 実用の両面から興味深い論文集である。§2では双曲型非線形偏微分方程式の初期値問題の大城解の差分法による存在証明とKorteweg-de Vries方程式の初期値・境界値問題の大城解の差分-微分法による存在証明について述べる。これらの方法および結果は数学的問題意識が優先したもので, 実用面の要求に直接に答えるものではないと思うが, 今後, 数学, 物理学の相互の刺激によって改良され, 大きな発展をすることが期待される。

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