日本物理学会誌
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遺伝子工学
飯野 徹雄
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1978 年 33 巻 12 号 p. 959-965

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抄録

遺伝子工学という言葉が盛んに使われているが, こうした学問分野がすでに確立されていると考えるのはまだ早いように思われる. むしろ, 近年遺伝学の分野で確立された'試験管内DNA組換え技術'-つまり私達が現在'遺伝子操作'と呼んでいる技術-を, 今後生物による生産や医療に適用してゆく過程で創り上げてゆく, 明日の学問分野といえよう. 遺伝子工学あるいは遺伝子操作がジャーナリズムで話題にされる時, 必ずといって良い程ふれられるのが, 人類の福祉への貢献に対する期待と共に, 新たな生物災害の発生に対する危惧であり, それに伴って国際的な社会問題となっている, 安全保障に関する議論である. こうした問題を専門外の方々に理解して戴くために, 先ず遺伝子操作とはどんな技術であるかを解説し, つづいて, この技術を用いた研究の成果と将来への期待をのべ, 最後に, 問題となっている危険性とは一体どんなものであり, それに対してどのような対策がはかられるかを概説してみた.

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