1980 年 35 巻 2 号 p. 149-161
微分方程式は, 古典力学と共に誕生した. その対象はケプラーの法則のような「秩序」であると信じられてきた. しかし, 微分方程式は自然現象を忠実に描写する, 極めて良い道具であり, 例えば, 乱流をも記述してしまっていた. さらに, 差分方程式は複雑で微分方程式は単純であるという神話も, 自由度1, 2の世界のものであり, 統計力学のレジームに入る, 乱流のようなカオティックな現象も自由度有限の世界で既に現れている自然な現象である. ここでは, 最も簡単な一次元変換について, 統計力学的な定式化に向けての, 数学的, 即ち, 愚直な試みを述べる.