日本物理学会誌
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エントロピーと情報 : 関数解析の見地に立って
梅垣 壽春大矢 雅則日合 文雄
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1980 年 35 巻 3 号 p. 241-252

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抄録

数学という基盤に立って物事を体系付けようとする場合, まず定義を与えることから始められる. 定義は論理的な約束, 或いは規約に基づいた条件の組合せによって設定される. エントロピーという物理学上の概念が三つの条件からなる公理系によって定義付けられたことによって遂には情報理論という全く新しい数学が構築され, 古くからの数学の問題が解決されたり, 新たな数学の概念が発見され, それが数学の進歩を促し, その結果自然科学以外の他の領域にも重大な関わりをもたらしている. エントロピーとは非常に不可思議な数理形式をしている. それが必ずS(P)=Σpklogpk-1とかS(f)=∫flogf-1dXというように表わされる必然性は偶然を支配する神々のなす業なのであろうか. 最近では再び物理, 詳しくは数理物理学ともいわれる境界領域に, 情報理論的に構成された相対エントロピーなどが頻りに立場して来ている. まさに, これは数学と物理学との交流の接点とでもいうべきか. 今後も問題点がこの接点の近傍で探求されることが期待される.

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