1987 年 42 巻 8 号 p. 722-731
最近f電子系, 希土類及びアクチナイド化合物, に現れる価数揺動と呼ばれる異常現象が大きな興味を集めている. その最も典型的な例, 高濃度近藤状態と呼ばれる状態で, 高温では物性に於る最も典型的な多体状態の一つとして知られる不純物近藤状態の集まりの様な性質を示すが, 近藤結合エネルギーよりも低温になると急速にコヒーレンスが発達して近藤格子と呼ばれる新しい多体状態に移り, そこでは特に通常電子の千倍以上にも達する重い質量を持ったフェルミ流体的振舞を示し, それが異常な超伝導さえも引き起すことが分ってきた. 類似の振舞が典型的高濃度近藤系以外にも起り, 広く重い電子の問題として集中的な研究がなされている. この問題の基本的立場について概観する.