自然界では, 小は木の葉のそよぎから, 大は気象衛星の写真に見られる雲の集団の形や動きのように, 複雑で予測不可能な現象が至る所で起こっている. 物理学では, その自然から簡単な要素系を切り出し, 簡単な運動法則を発見してきた. しかし, 簡単な要素系も実は, 大抵の場合, 複雑で予測不可能な運動を示し, 複雑さは運動法則の非線形に由来する普遍的現象であることが分かってきた. それは, 周期的外力下の振り子や水素原子, 流体のベナール熱対流等の簡単な要素系に見ることができる. 簡単な運動法則が如何にして複雑さを作り出すか, 複雑さはどんな姿をし, どんな秩序構造を内包しているかが研究されている.