1991 年 46 巻 4 号 p. 288-293
低温STM/STSが開発されたことによって, Giaever以来行われてきた超伝導体のトンネル分光法が原子スケールの空間的分解能という新機能を得た. この手法により, 超伝導体に侵入した磁束量子の渦糸(Vortex)内の素励起と酸化物超伝導体の異方的な局所状態密度が初めて明らかにされた. 一方, STMはその原理から絶縁性有機物質に適用するのは難しいと思われているにもかかわらず, 導電性基板表面に吸着・固定させて原子・分子配列の構造観察が行われ, DNAの塩基配列解読への挑戦にまで及んでいる. STM像が得られる機構についても考察する.