1995 年 50 巻 9 号 p. 721-725
今年2月下旬,カリフォルニア大学サンタバーバラ校で,宇宙マイクロ波背景輻射(CMB: Cosmic Microwave Background)揺らぎに関する国際会議が行われた.約100人の専門家,また広く天文学,天体物理学からの参加者を得,非常な盛況であった.この会議は,この分野が現在大きな注目を集め,宇宙論のなかでも重要な位置を占めるようになってきたことを強く印象的づけるものであった.1992年4月,20年近くの歳月を費やして打ち上げられた宇宙背景輻射探査衛星(COBE: Cosmic Background Explorer)によって,CMBの温度に空間的揺らぎが発見された.この発見を一つの契機として,以後地上から,そしてまた気球を用いた観測の数が爆発的に増加してきている.さらに理論的にも,CMB揺らぎの物理的解釈や計算方法,また観測との比較の手法など多くの点で急速な進歩が遂げられつつある.この小文では,現在どこまでいろいろなことがわかってきたのか,また今後どのような進歩,発展が期待されるのか,について私自身の研究を交えて解説する.