チトクロムc酸化酵素は, 呼吸によって得た酸素を水に還元する反応を触媒すると同時に, ミトコンドリアの内膜の一方側から他方にプロトンを能動輸送する. ウシ心筋のチトクロムc酸化酵素は13種の異なったタンパク質サブユニットでできており, 合計26サブユニットで2量体を形成している. 分子量が40万を越え, 今までにない複雑な分子組成であるこの酵素の, 原子レベルでの構造決定に成功した. その結果, まったく新しい活性中心の構造が明らかになるとともに, さらに大きな分子の構造解析の可能性も拡がった.