日本物理学会誌
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非線形性とくりこみ
大野 克嗣
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1997 年 52 巻 7 号 p. 501-507

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抄録

我々の世界に満ち満ちている非線形性は, 我々が知りたい(時空)スケールをそれから懸け離れた我々には知り得ないスケールと結合してしまう(1節). だが, それにしては我々の世界はそんなに無法則的には見えない. ある現象が「よく変わる部分」と「そうでない部分」からなるなら, 後者に目をつけることで現象がわかった気になれるようだ(2節). 「くりこみ」は「そうでない部分」を浮き彫りにしてくれる. そこでまず, 簡単な例でくりこみの処方を説明しよう(3節). 「くりこみ」で世界の細部によらない構造を抽出できるなら, それは系の長時間挙動の理解にも使えるだろう. より一般に, くりこみは(非線形系の)「漸近解析」の指針たりうるであろう(4節). くりこみはこのような技術的問題に有効なだけでなく, もっと大きな文脈の中でも意味を持っているのではないだろうか(5節).

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