日本物理学会誌
Online ISSN : 2423-8872
Print ISSN : 0029-0181
ISSN-L : 0029-0181
走査トンネル顕微鏡探針を用いた DNA 分子の識別と操作
川合 知二
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 52 巻 9 号 p. 667-674

詳細
抄録

走査トンネル顕微鏡(STM)の極微な針先によって, 固体表面分子の電子状態が実空間で観測でき, DNA塩基など1分子の識別が可能になってきた. 驚くことに, 吸着DNA分子を針先で一つ一つ移動操作することも可能になりつつあるが, そこには針先1原子と吸着1分子との波動関数の重なりや, 場合によっては極度に集中した電界など"極微表面"に特有な支配原理がある, この表面分子の世界では, 分子間および表面との相互作用に起因した華麗な2次元超構造が形成されることもSTMによって明らかになってきた. "極微な表面の科学"として, STMによるDNA分子の"識別", "操作", "自己組織化"の元となる原理を基礎から説き起こし, 研究の現状と今後の発展性について述べる.

著者関連情報
© 社団法人 日本物理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top