2002 年 57 巻 5 号 p. 321-329
最近, 分子の幾何学的構造に着目し, その特徴を生かした分子集合体を構築する超分子科学が注目されている. その一つの代表例とされているのが, 環状分子が低分子や高分子をその孔の中に取り込む包接現象である. このような環状分子と高分子からなるポリマー性超分子では, 高分子が環状分子による幾何学的拘束を受けることで, 高分子のもつ形態エントロピーおよび運動が制御され, 紐としての「高分子らしさ」が物性に顕著に発揮されることになる. 本稿では, 分子被覆導線やトポロジカルゲルなど最近話題となっている様々なポリマー性超分子を紹介するとともに, 高分子物理の手法を用いてポリマー性超分子の特徴を分かりやすく解説する.