抄録
近時のとくにいちじるしい世相のひとつは、女性の職場活動である。会社、工場、官公庁に、また販売業、サービス業などに働らく女性のおびただしいことは、日常衆目に映ずるところである。これは、ひとつには産業の高度成長に伴う労働力需要の増大に対応する現象であるためであるが、もうひとつは女性自身が家事専念の因習を脱皮し、職業参加の新しい役割に目ざめたと考えられる。そこに、女子に対する進路指導のあり方に関し、改めて検討すべき問題がひそんでいる。それは主として、女子の職業進出と、女子特有の使命である家庭経営との調整に関連するものであり、家政担当の使命との関係を抜きにしては、女子の職業界への参加は考えられないものである。そのことを考慮すると、女子の進路指導においては、従来のように単に卒業時の進路の選択を援助するだけでなく、もう少し長期を見通したキャリア計画の樹立を援助する必要があるとしなければならない。このような観点にたち、筆者は、女子学生・生徒に対する進路指導の実践に関するひとつの基礎資料として、現在女子大学に在学する者の卒業時の進路選択と卒業後のキャリア計画がどんなものであるかを察知するための実態調査を試みたので、その結果をここに報告しようと思う。