日本白内障学会誌
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第53回日本白内障学会学術賞受賞記念論文
水晶体のアクアポリン0の役割および機能に関する研究
中澤 洋介
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2015 年 27 巻 1 号 p. 9-13

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抄録
アクアポリン0(AQP0)は,水晶体線維細胞膜の60%以上を占める膜蛋白質であり,他のアクアポリンファミリーと比較し水の透過性が非常に低く,また細胞膜の接着にも関与することが示唆されていることから,他のアクアポリンファミリーとは異なる性質をもつと推察されている.本研究では,AQP0に着目し,AQP0のチャネル機能の解明を目的とした.まず糖尿病モデル動物を用いてAQP0の発現量と水晶体線維細胞膜のアスコルビン酸透過能を検討した結果,糖尿病発症ラットの水晶体AQP0 mRNA発現量増加と,細胞膜のアスコルビン酸透過量および透過速度の上昇が明らかとなった.また,恒常的にAQP0を発現させた細胞を用いてアスコルビン酸透過能を検討した結果,アスコルビン酸がAQP0を透過することを明らかにした.これらの結果から,AQP0を介したアスコルビン酸制御により,水晶体中でアスコルビン酸が均一に拡散しているものと推察された.水晶体は代謝が遅い組織であるため,物質透過が十分に調節される必要があると考えられる.水晶体内のアスコルビン酸透過機構の解明は,酸化ストレスが引き起こす白内障の治療法の開発に貢献するものと考える.
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© 2015 日本白内障学会
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