日本白内障学会誌
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最新号
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巻頭言
日本白内障学会学術賞(基礎)
  • 平松 範子
    2024 年 36 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/18
    ジャーナル フリー

    水晶体透明性維持のメカニズムは完全に解明されていない.筆者らは,独自に作出した不死化ヒト水晶体上皮細胞(iHLEC-NY1)を用いて三次元細胞凝集体モデル(3D model)を作製し,内部構造と水晶体特異的蛋白質の発現を評価した結果,生体水晶体に類似した蛋白質発現の極性と細胞核の消失が観察されたことから,水晶体上皮細胞の分化能力が保持された3D modelを作製することができた.さらにiHLEC-NY1-3D modelとSoemmering's ringとの組織構造比較から,細胞配列や蛋白質発現の極性が類似しており,後発白内障に対するin vitro創薬開発モデルとしての可能性が示唆された.一方,ヒト虹彩由来iPS細胞(H-iris iPSC)を作製し,水晶体上皮細胞への分化誘導と3D-modelを作製したところ,水晶体組織幹細胞マーカーを発現する上皮様細胞の多層化構造などが観察された.

総説
《特集》教育セミナー:様々な白内障による臨床像
《特集》白内障学会シンポジウム 1「水晶体変化と白内障手術のUpDate」
《特集》白内障学会シンポジウム 2「白内障手術の再考:術式と眼内レンズ固定法の創見」
《特集》水晶体研究シンポジウム「環境温度と白内障」
《特集》合同シンポジウム「若手研究者による研究発表シンポジウム」
原著
  • 門脇 玲太, 明和 亮伍, 岩井 誓治, 永田 万由美, 松島 博之, 中澤 洋介, 山本 直樹, 佐々木 洋, 長井 紀章
    2024 年 36 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/18
    ジャーナル フリー

    筆者らはこれまで,Ca拮抗薬ニルバジピン(NIL)を標的としたナノサスペンションを調製し,白内障予防効果を示すことを報告してきた.本研究では,NILナノサスペンション(71 nm)点眼群の眼組織中薬物到達量が,経口摂取に換算した際どの程度の投与量に相当するのかを比較検討した.NILナノサスペンション点眼群と同程度の薬物量を水晶体や網膜に送達するためには50 mg/kg NIL懸濁液(21μm)の経口投与が必要であり,臨床で適用される4 mg/ 日よりはるかに高用量であった.また,NILナノサスペンション点眼50分後の血中NIL値はわずかであり(0.041 nM),血圧変動もみられなかったが,50 mg/kg NIL経口投与50分後の血中濃度は616.7 nMと高く,収縮期と拡張期血圧ともに減少が認められた.以上,NILナノサスペンション点眼は経口投与に比べ,眼科用局所薬物送達システムとして有用であることを示した.

  • 小原 絵美, 中村 邦彦, 藤﨑 理那, 太田 友香, 南 慶一郎, ビッセン宮島 弘子, 高野 正行, 古澤 成博, 四ツ谷 護
    2024 年 36 巻 1 号 p. 100-103
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/18
    ジャーナル フリー

    目的:白内障手術時に,多焦点眼内レンズ(IOL)が挿入された歯科医の視機能をIOLの近方加入度に分けて検討した.対象と方法:両眼に多焦点IOLが挿入され,本研究に同意の得られた歯科医に,歯科診療(補綴,保存,口腔外科)と日常生活における見え方と眼鏡装用をアンケート調査し,診療記録から術後1カ月以降の視力を取得した.結果:回答が得られた20例のうち,高加入度群(2焦点・3焦点・連続焦点IOL)が15例,焦点深度拡張(EDOF IOL)群が5例であった.歯科診療時の見え方に問題ありと回答したのは,高加入度群で補綴装置研磨と根管治療の約8%のみであった.眼鏡装用は高加入度群で30~40%,EDOF群はほぼ100%であった.日常生活での近用眼鏡は高加入度群が15.4%,EDOF群が50%使用していた.裸眼および矯正視力は両群とも良好だった.結論:高加入度およびEDOF型多焦点IOLは歯科診療で支障になる可能性は低く,高加入度型は診療および日常生活での眼鏡依存度の軽減に有用であった.

  • 門脇 玲太, 浅井 拓己, 出口 粧央里, 大竹 裕子, 岡本 紀夫, 中澤 洋介, 佐々木 洋, 長井 紀章
    2024 年 36 巻 1 号 p. 104-109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/18
    ジャーナル フリー

    水晶体硬化は加齢性核白内障の初期症状であり,水晶体弾性の把握は白内障研究において重要である.本研究では亜セレン酸誘発白内障モデルを用い,キネティクス解析法の適用が従来の押圧時の移動度を固定した解析法(押圧法)の改善に繋がるのかを検討した.3.5 mg/kg亜セレン酸ナトリウムの皮下注射により水晶体核部の混濁が認められた.一方,0.5~2.5 mg/kg亜セレン酸ナトリウム投与群では,水晶体は透明であったが,水晶体弾性の低下がみられた.次に,これら亜セレン酸ナトリウム投与群に対し1次式を基にしたキネティクス解析を適用した.その結果,キネティクス解析を用いない従来の解析法と比較し個体間のばらつきが低値であった.本解析法は水晶体硬度変化の評価精度の向上に有用である.

  • 上原 朋子, 藤﨑 理那, 小原 絵美, 太田 友香, 南 慶一郎, ビッセン宮島 弘子
    2024 年 36 巻 1 号 p. 110-112
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/18
    ジャーナル フリー

    目的:高次非球面を付加し焦点深度を拡張した眼内レンズ(IOL)挿入眼の術後屈折と裸眼視力を後向きに調べ,単焦点IOL挿入眼と比較した.対象と方法:白内障手術時に高次非球面単焦点IOL(D群)あるいは単焦点IOL(Y群)が挿入され,術後1カ月の矯正視力が0.8以上の症例を対象とした.診療記録から,術後1カ月時の自覚屈折(等価球面,SE),裸眼遠方視力から,裸眼視力0.8,1.0以上の割合,SEによる裸眼視力変化を調べた.結果:D群では,SEが−1.0 D以下から−2.5 Dまででも0.8,1.0以上の症例を認めた.SEによる裸眼視力変化では,D群は−0.37 Dまで視力1.0以上が維持された.結論:高次非球面IOLでは,良好な裸眼視力が得られる屈折の許容範囲が単焦点IOLより広いことが示唆された.

  • Mikako Oka, Masayasu Bando, Yosuke Nakazawa, Hiroko Ushikubo, Takashi ...
    2024 年 36 巻 1 号 p. 113-122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/18
    ジャーナル フリー

    Purpose: To identify water-soluble ascorbate free radical (AFR) reductase in lenses. Materials and Methods: AFR reductase was purified from the water-soluble fractions of rabbit lenses by gel filtration, cation exchange chromatography, isoelectric focusing, and two-dimensional (2-D) gel electrophoresis. Protein spots in 2-D gel were identified using MALDI TOF-MS, and peptide fragment sequences were determined by MALDI TOF/TOF. An expression vector was constructed to produce recombinant AFR reductase. The AFR reductase activity of the recombinant protein was assayed. Results: The active AFR reductase fraction separated from the water-soluble extract of rabbit lenses showed an isoelectric point of pI 8.4, and a molecular weight of approximately 30 kDa. Water-soluble AFR reductase was identified as cytochrome b5 reductase 2 isoform X1 or X2 by MALDI TOF-MS and MALDI TOF/TOF. Recombinant cytochrome b5 reductase 2 showed AFR reductase activity. Conclusions: This study identified water-soluble AFR reductase in lenses as cytochrome b5 reductase 2.

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