脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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シンポジウム 2 脳梗塞の病態と新規治療開発の将来像
自然免疫を標的とした脳梗塞治療
大星 博明
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2016 年 27 巻 2 号 p. 259-263

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抄録

近年脳虚血後に生じる炎症反応・免疫応答が,虚血性脳損傷を修飾する重要な因子として注目されている.損傷脳組織から放出されるHMGB-1 やヌクレオチドなどのダメージ関連分子パターン(DAMPs)は,Toll 様受容体(TLR)等を介して炎症応答細胞を活性化し,炎症性シグナルカスケードによる脳浮腫の増悪やペナンブラ領域の細胞死をもたらし,二次的な脳梗塞巣の拡大へとつながる.我々は最近脳虚血における新たなDAMPsとしてペルオキシレドキシンがTLR2 やTLR4 を介して浸潤マクロファージを活性化することを明らかにした.また,脳虚血後の炎症反応において,活性化されたマクロファージがインターロイキン-23(IL-23)を放出し,γδT 細胞を活性化してIL-17 を産生させ,二次的な脳梗塞の増大に寄与することも明らかにしている.脳虚血後に生じる自然免疫を中心とした反応をさらに解明することによってtherapeutic window の広い脳保護療法へと発展することが期待される.

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© 2016 日本脳循環代謝学会
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