脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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原著
15O-PETとの比較からみたMRI ASL(arterial spin labeling)におけるmultiphase PLD(post labeling delay)の重要性
板垣 寛小久保 安昭笹生 香菜子佐藤 慎治山田 裕樹佐藤 慎哉園田 順彦
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2017 年 28 巻 2 号 p. 273-279

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抄録

MRI arterial spin labeling(ASL)法による非侵襲的脳循環評価法は汎用性と簡便性から注目されているが,arterial transit time の問題もあり,SPECTやPETといった既存検査と同等の信頼性は未だ確立されていない.本研究では,ASLが脳循環評価において反映している動態を明らかにするため,慢性虚血性脳血管障害症例20例に対しmultiple post-labeling delay(PLD)ASLと15O-PETの比較検討を行った.CBF/CBVおよびCBFとの相関ではPLD 1000および1500いずれのshort PLDでも有意に相関を認め,CBVとの相関でも負の相関を認めた.CBF左右差10%以上の変化に対する各PLDのROC解析の結果は,5 phase PLDの中でPLD 1000のarea under curve(AUC)が0.987(p=0.001)と最も高く,CBF左右差10%以上に対するカットオフ値はPLD 1000 ASL左右差31%以上で,感度100%,特異度93.3%であった.以上より,short PLD,とくにPLD 1000が脳灌流圧を反映している可能性を示唆された.この結果からASLが慢性虚血性脳血管障害症例における脳循環評価のスクリーニングとして有用であることが示された.

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© 2017 日本脳循環代謝学会
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