2018 年 30 巻 1 号 p. 71-75
我々は,マウス脳梗塞モデルを用いて脳虚血傷害時に特異的に産生される血管壁細胞由来多能性幹細胞の存在を見出し,虚血ペリサイト(ischemic pericyte: iPC)・虚血傷害誘導性多能性幹細胞(ischemic injury-induced multipotent stem cell: iSC)と命名した.この幹細胞は,すでにヒトでも同定されており,神経機能単位であるneurovascular unit を構成するすべての細胞に分化しうるため脳梗塞後の脳組織そのものの修復機構に関与する可能性がある.正常脳に存在するペリサイト自身は幹細胞ではないが,潜在的な多能性幹細胞として組織修復に関わる可能性があるため,今後の脳梗塞をはじめとした中枢神経疾患の治療に活用できると考えている.