抄録
我々は、イオン、コレステロール存在下において、生体膜の非対称性を考慮した2種類のリン脂質二重膜のモデルを構築し、その分子動力学(MD)シミュレーションを行ったので報告する。細胞膜の細胞外側はフォスファチジルコリン (POPC)で、細胞内側はフォスファチジルエタノールアミン (POPE)、及びフォスファチジルセリン (POPS)で構成した。MDシミュレーションの結果、コレステロールはより充填した構造を形成することにより、膜の安定化に寄与していた。さらに、膜の非対称性は、水分子の分布や膜厚にも影響していることが明らかになった。また、膜のPOPE/POPSによる混合性はイオン分布に影響し、その結果、Na+イオンはPOPSの分布に沿って分布していた。これらの結果から、膜の非対称や混合性は膜周辺の環境に大きく影響し、膜タンパク質にも何らかの影響を与えることが示唆された。