地域地理研究
Online ISSN : 2433-460X
Print ISSN : 2187-8277
地域性と女性のライフステージが 農村女性グループに与える影響
―岡山県内のJA女性部フレッシュミズ部会を事例に―
本田 恭子岡本 彩花金 枓哲
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2022 年 26 巻 2 号 p. 23-43

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抄録
本研究は、岡山県内の農業協同組合(JA)の女性部フレッシュミズ部会を事例に、農村女性のグループ活動を都市近郊地域と中山間地域で比較した。その結果、農村女性のグループは女性のライフステージのみならず地域性によっても異なることが明らかになった。都市近郊地域には狭い範囲でも20~50代の女性が一定数以上存在するため、メンバーを集めやすく、頻繁な活動が可能である。非農家が中心となることがあり、非組合員が含まれることもある。これに対して中山間地域では、数少ない女性が広範囲に住んでいるため、活動の範囲を広げざるを得ず、頻度を上げることも難しい。農家や組合員もメンバーに含まれる。また、乳幼児期から学童期(特に小学校低学年まで)の子どもを持つ女性にとって、フレッシュミズ部会はママ友作りの場であり、子連れでの参加が基本となる。この傾向は子どもが小さいほど顕著となる。一方、子どもが青年期を迎えた女性にとってフレッシュミズ部会は同世代の女性同士の交流の場であり、女性だけの参加が基本となる。以上をふまえると、都市近郊地域では従来の地縁の女性組織と似た特徴をもつ女性グループが存続しやすく、子どもの年齢が小さいことや年配の女性組織との深い付き合いをもつことなどの一定の条件を満たすことで、地域活性化の主体として地域に貢献していく可能性がある。一方、中山間地域では、メンバー数を確保するために広域化せざるを得ない状況になっている。これにより、従来の地域の範囲を超えた交流などの新たな魅力が生まれている反面、移動の負担が大きいことや活動回数を増やしづらいというデメリットも抱え、女性の社会進出も相まって、組織自体の存続が難しくなっている。
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© 2022 地域地理科学会
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