循環制御
Print ISSN : 0389-1844
原著
ラット肝灌流モデルにおける肝機能正常時と異常時でのlidocaine代謝の比較
須崎 範子定松 舞子片上 智裕曽我 祐子門林 孝明佐々木 大輔廣谷 芳彦加藤 隆児井尻 好雄田中 一彦
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キーワード: 肝灌流
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2009 年 30 巻 2 号 p. 82-87

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抄録

Lidocaine(LID)は抗不整脈薬として用いられる薬物で,重篤な心室性不整脈を起こした緊急時の第一選択薬となっている.このため,緊急時には肝機能評価を行うことなく投与される可能性がある.そこで,ラット肝灌流モデルにおける肝正常時と肝障害時における LID の薬物動態を調べる目的で,灌流液中 LID とその代謝物である monoethylglycinexylidide(MEGX)の薬物動態学的パラメータを測定した.肝機能測定の結果より,灌流開始 30 分を肝正常時,150 分を肝障害時とし,LID 3mg/kg の投与を行った.その結果,AUCMEGX は灌流開始 150 分後の LID 投与において有意な増加が認められたが,それ以外のパラメータに有意な変化は認められなかった.また,灌流液中の MEGX 代謝に関わるエステラーゼ量が灌流開始直後より低下したため,MEGXの代謝・消失が遅延した可能性も考えられた.これより,肝血流量が一定である場合はある程度の肝障害を起こしている場合でも,LID は通常の投与量で投与可能であることが示唆された.

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© 2009 日本循環制御医学会
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