抄録
術後せん妄(POD, postoperative delirium)や術後認知機能障害(POCD, postoperative cognitive dysfunction)を含む周術期神経認知障害(PND, perioperative neurocognitive disorder)は全身麻酔あるいは手術侵襲を契機に発症し、術後入院期間や生存率に負の影響を与える。高齢者の手術適応は拡大しており、PND の予防は医療経済の観点からも周術期管理の喫緊の課題である。本研究ではremote ischemic preconditioning(RIPC)による脳脊髄液(CSF)内Myokine のプロテオーム変化が脳保護作用を与えるという仮説に基づき、sequential window acquisition of all theoretical fragment ion spectra(SWATH)法によるCSF 時系列検体のプロテオームを解析した。結果、代表的なMyokine であるFNDC5 およびSPARC がCSF内でRIPC 施行1 時間後に有意に増加することが示された。これらMyokine によるmuscle-braincrosstalk がRIPC による脳保護機序の核をなしている可能性がある。