抄録
本研究では, 全国343の自治体を対象に, 条例に基づく保存樹木等の指定件数, 指定解除, 助成措置等の現状や, 運用上の問題点を把握し, 今後の樹木保全のあり方を検討した。その結果, 過去3年間で保存樹木1,092件, 保存樹林465件が指定解除されており, その主たる要因は, 枯死·倒木, 維持管理の手間, 相続税の負担, 宅地開発であることが把握された。所有者への助成措置は, 管理費相当の助成金が中心であり, 固定資産税等の減免措置のある自治体は少なかった。以上より, 基準を強化して指定件数の拡大を図るとともに, それらを適切に維持すべく, 所有者への助成金や保存樹木等の買取り資金の確保, 所有者および地域住民の保全意識の向上等の必要性が指摘された。