環境情報科学論文集
最新号
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研究論文
  • 菊池 武晴, 岩本 朋大
    原稿種別: 研究論文
    p. 1-7
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    脱炭素社会をめざす上で,再生可能エネルギー発電の拡大が必要とされているが,地域合意に時間がかかるケースが多い。導入加速化のためには,再エネ発電所新設・稼働により地域が裨益する効果を定量化し地域関係者に提示することが有効である。本稿では福井県奥越地区木質バイオマス発電所を対象に分析を行う。まず福井県産業連関表を基に奥越地区の地域産業連関表を作成した上で,同地区にある木質バイオマス発電所がもたらす地域経済活性化効果を算出した。これら作業を通じて,奥越地区の地域産業構造を明らかにするとともに,木質バイオマス発電所が地域のどの産業に裨益するのかを定量的に示した。

  • 神奈川県小田原市を事例として
    柴田 直弥, 錦澤 滋雄, 村山 武彦, 長澤 康弘
    原稿種別: 研究論文
    p. 8-13
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    2013 年から導入が本格化したソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は,導入推進にあたり様々な課題が発生している一方,耕作放棄地の解消手段としても期待されている。本稿では,耕作放棄地を再生させ,地域と共生した小田原市の事例に着目し,周辺住民へのアンケート調査からソーラーシェアリングの地域共生に関する住民意識との関係性を考察した。その結果,住民属性である移住経験・居住年数が,地域課題である耕作放棄地の認識と相関を持ち,最終的なソーラーシェアリング事業への賛否・参画意欲の形成と相関があった。今後は,地域課題低減などの地域便益創出による再生可能エネルギーの地域共生手法の研究や支援策の拡充が必要と考えられる。

  • 坂部 創一, 山崎 秀夫
    原稿種別: 研究論文
    p. 14-19
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    インターネット利用が,レジリエンス(精神的回復力)に向上や低減効果を与える影響度を分析するために,大学生を対象にした縦断調査データを用いて共分散構造分析を行った。その結果,オンライン上で苦楽を共有し相互に励まし合う共感的ネット利用や,精神的な活力を得ることの出来る特定の動画視聴を意味する活力喚起型動画視聴が多い学生ほどレジリエンスが高い傾向を示し,逆にネット依存症傾向が高い学生ほどレジリエンスが悪化する傾向を示した。これらの結果は、インターネットの活用方法を変更することにより、レジリエンスを向上させる可能性を示唆している。

  • 山崎 慶太, 平野 勇二郎, 高口 洋人, 豊田 知世, 宮崎 賢一
    原稿種別: 研究論文
    p. 20-26
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    木質バイオマス熱電供給(CHP)13 施設の調査により,川上の丸太供給,川中の燃料製造,川下の発電・熱供給から最終的な電力・熱需要にまで遡り,地域循環システム(LCS)全体のエクセルギー(Ex)利用率を求め,バイオマス資源の有効利用度を比較した。CHP の容量と燃料は,川上,川中での燃料供給を基に,川下での電力と熱の需要のバランスを考慮して選定し,ヒートポンプやLED 照明などの効率の高い機器を採用して電力需要Ex 利用率を高め,給湯・空調・乾燥を組み込んで熱需要Ex 利用率を高める,建物用途を含めた建築・設備の計画時からの最適な設計の取り組みで,Ex 利用率が高く,脱炭素に貢献するLCS を実現できる。

  • 大橋 唯太, 井原 智彦, 高根 雄也
    原稿種別: 研究論文
    p. 27-32
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    東京23 区の夏季熱中症と虚血性心疾患の高齢者死亡リスクを,沿岸と内陸の地域別に高温経験の遷延性を考慮して解析した。日最高気温99 パーセンタイルの37℃高温経験は,沿岸地域で3日後,内陸地域で6日後まで熱中症リスクを高めていた。日中の高温条件では沿岸のほうが内陸よりも死亡リスクが高い一方,夜間の高温となる日最低気温28℃では逆に内陸のほうが死亡リスクは高くなった。虚血性心疾患の遷延性は特に沿岸地域で熱中症よりも長く12~13 日後までみられ,死亡リスクも沿岸が内陸よりも高くなっていた。日中の気温が高い日ほど業務・商業施設が集中する沿岸地域への高齢者の流動人口は減少し,気温による大規模な行動変容が確認された。

  • 佐藤 聖史, 吉田 好邦
    原稿種別: 研究論文
    p. 33-39
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    太陽光(PV)発電量と電力需要の予測精度が地域電力システムにおけるコスト,CO2 排出量,バッテリー容量に与える影響を分析した。予測手法によって総コストが最大38%,最適バッテリー容量は最大60%削減され,予測手法の選択がコストとバッテリー容量に影響を与える。CO2 排出量はPV 規模が増大することで削減されるが,削減効果は予測手法によって変動する。PV 規模を増加させることで削減されるCO2 排出量が精度の低い予測手法では8%,精度の高い予測手法では15%となった。不足及び余剰インバランス率はバッテリーと自家発電装置の導入によって減少し,さらに精度の高い予測手法を用いることで削減効果が高まる。

  • 劉 在強, 加藤 尊秋
    原稿種別: 研究論文
    p. 40-45
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    脱炭素化のために開発されている技術にCCS がある。本研究の目的は,温室効果ガスの排出量が多く,CCS の実験的運用が行われている中華人民共和国において,社会的受容やリスク研究における先行研究を参照し,科学技術への信頼,有用性,リスク認知,便益認知,NIMBY 等の要因がCCS の受け入れ態度に及ぼす効果を検討した。さらに,CCS に関する成功事例,および,リスク情報の提供がどのように受容に影響するかを分析・評価した。

  • 全国154 のSDGs 未来都市計画及び15 自治体への聞取り調査結果を題材として
    増原 直樹, 岩見 麻子, 熊澤 輝一, 鈴木 隆志, 松井 孝典, 川久保 俊
    原稿種別: 研究論文
    p. 46-51
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    日本全国のSDGs 未来都市について,154 の未来都市計画の内容分析と15 の自治体担当者を対象とした聞取り調査結果を基に,SDGs 政策の重点ゴールの変化,総合計画におけるSDGs 対応の手法,庁内外への普及啓発の現状とSDGs 推進上の課題を明らかにした。SDGs 担当課だけでなく行政各課もSDGs マッピングの作成過程に参加することで普及啓発のねらいがあると考察されたほか,先行研究と比較したところ未来都市における課題と一般的な自治体における課題には異なるところがあり,先進的に取り組んでいるが故に生じる課題がいくつかの未来都市で明らかになった。

  • 佐々木 章晴, 鈴木 理恵, 山崎 慶太, 野口 賢次, 佐藤 研一, 当真 要
    原稿種別: 研究論文
    p. 52-57
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    土壌による炭素固定は,地球温暖化の抑制に有効と考えられる。日本の農林業の40%は中山間地で営まれているため,中山間地土壌は大気からの炭素隔離の場として可能性がある。しかし,中山間地の土壌炭素含有率の実態や,変動要因については知見が少ない。そこで,関東,九州北部の中山間地において,土壌炭素含有率の変動要因について検討を行った。また,木炭と竹炭の土壌施用による影響も検討した。土壌炭素含有率に影響するのは,試験前の土壌炭素含有率(R=+0.99),平均気温(R=-0.54),土壌交換性CaO 含量(R=+0.59)であった。木炭や竹炭の施用による土壌炭素含有率の変化は,今回の試験サイトでは見られなかった。

  • 上田 萌子, 山田 悠大
    原稿種別: 研究論文
    p. 58-63
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,大阪府内を対象とし,天然記念物の市町村別や分野別の指定件数の現状を把握したうえで,指定件数が少ない市町村で今後指定すべき価値のある社寺林を評価した。その結果,市町村で天然記念物の指定件数に偏りがあることや,植物群落の指定率は植物個体に比べて低いことが明らかになった。また,天然記念物に指定されていない13 件中5 件の社寺林で,学術上貴重な植物群落の有無,樹林の発達程度,自然性や種多様性の3 つの観点から価値が認められた。

  • 藤平 慶太
    原稿種別: 研究論文
    p. 64-69
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,風力発電事業者が日本のFIP 制度の下で水素製造設備を導入し,売電価格変動に対応して水素を製造するPower-to-Gas の追加的価値について分析し,設備導入の成立条件について検証した。価値の変化に影響を与える要素を,水素販売価格,売電平均価格,売電価格ボラティリティ,水素製造設備単価に分解して,ケーススタディによる感度分析を実施した。これにより,この事業モデルが成立するための各要素の水準についての示唆を得ることができた。このうち,水素販売価格の影響が価値に与える影響が大きいが,そのほかの要素も複合的に価値に影響を与えることがわかった。

  • 山下 奈穂, 松代 竜毅, 蛭田 有希, 白川 博章, 谷川 寛樹
    原稿種別: 研究論文
    p. 70-77
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    近年,建築物や社会基盤施設の老朽化が課題となっており,限られた人的資源や財源によってこれら物質ストックを計画的に維持管理・更新していく必要がある。本研究では,全国の下水道管渠を例として,管渠の健全度及び人口予測に基づき将来退蔵化するリスクを検討した。推計結果から,全国の下水道管渠ストック量は2018 年に115 百万t であり,改築が必要な老朽管渠の割合はコンクリート管,塩ビ管でそれぞれ29%13%であった。退蔵化リスクは北海道,奈良県,山口県,宮崎県,鹿児島県で高く,これらの地域では特に将来の経費回収率の低下や労働力不足を踏まえた計画的な対策が必要であると示唆された。

  • 松井 孝典, 安藤 魁呂, 今井 隼人, 芳賀 智宏, 岩見 麻子, 増原 直樹, 川久保 俊
    原稿種別: 研究論文
    p. 78-85
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究ではデータ駆動アプローチによってSDGs のグローバル目標とターゲットの連環であるネクサス構造を分析した。SDGs ローカル指標、SDGs 未来都市計画を対象に、スパースモデリングやネットワーク分析の技術を適用することでネクサス構造を帰納的に推論して可視化した。 その結果、現状の日本のSDGs のグローバル目標とターゲットには特徴を持ったネクサス構造があること、日本のSDGs の状態を表す顕示データであるローカルSDGs 指標による推論されるネクサス構造とこれからSDGs 未来都市が行おうとしている計画の選好データに見られるネクサス構造は異なる傾向を持つことを示した。これらの知見は、シナジー・トレードオフ構造を理解した上でのセクターを超えた包摂的な計画立案、パートナーシップの形成への示唆を与えると期待される

  • 小濱 幸平, 甲斐田 直子
    原稿種別: 研究論文
    p. 86-91
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は,肉類消費抑制と代替肉利用における促進・阻害要因把握と説得的コミュニケーション情報提供による促進可能性検証を目的とした。内容の異なる情報提供5 条件と統制条件を設定した消費者質問紙調査の回答データ(n = 281)にもとづく分析の結果,勧告条件,環境規範条件,健康規範条件は統制条件と比べて肉類消費抑制意図と代替肉利用意図がともに高いことが認められた。調理法などの具体的な情報や健康志向による代替肉転換傾向を喚起する情報を加えることが,肉類消費抑制・代替肉利用を促す上で有効であることが示唆される

  • 長澤 康弘, 錦澤 滋雄
    原稿種別: 研究論文
    p. 92-97
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,再生可能エネルギーに関する条例における協定の傾向と合意形成上の役割を明らかにした。まず,太陽光発電施設に焦点を当てた条例が急増し,地域環境影響への対応と事業の適切性の確約の具体的な記載が多くみられた。そして,事例分析の岐阜県恵那市では,地域住民等と事業者の協定締結に関し自治体は助言などに留まり,短期間で妥協点を見出すため協定書のひな型を用意していた。これらでは,地域環境影響への対応,事業の適切性の確約,平常・災害時のコミュニケーション,地域貢献の取り決めに加えて,関係法令では規定がなく太陽光発電施設設置の制限が困難な区域において同施設設置の設定場所の交渉を行う機能も考慮されていた。

  • 橋本 佳奈, 山口 創
    原稿種別: 研究論文
    p. 98-103
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,消費者の特徴のなかでも農業や農作物に対する考えに着目し,消費者のCSA 加入意向との関係を明らかにした。鳥取市若葉台地区で実施したアンケート調査で得られた212 部を用い分析した結果,回答者のうち35.3%がCSA 加入意向を示すことが明らかとなった。また,消費者のなかでも農業や農作物に対して幅広い関心を示す「多角的関心層」が,全般的に関心の低い「低関心層」「無関心層」と比べて,高いCSA 加入意向を有することが明らかとなった。これらの結果からCSA 普及の方策として,CSA が果たす役割を消費者に詳細に示すことが加入者の獲得につながると考えられた。

  • 在のみデータに対するMaxent と機械学習による比較
    阿部 将貴, 坂本 麻衣子
    原稿種別: 研究論文
    p. 104-109
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    有害鳥獣が生態系,農林水産業及び生活環境に深刻な被害を及ぼすことから,加害鳥獣の捕獲行為を通じて公益を担う狩猟者の役割は高まっており,狩猟者に対する有益な情報提供が必要とされる。しかし,過去の捕獲情報を基にした捕獲地予測に関する研究は国内においてはいまだ数少ない。そこで,本研究では島根県の2010 年から2018 年のシカ捕獲記録を用い,より高い空間分解能と機械学習手法を取り入れ,捕獲確率を予測した。その結果,250m メッシュでの予測にCatBoost を適用することで,国内の標準的な種分布の予測モデル(1000m メッシュでのMaxent の適用)よりも,高精度かつ高分解能の捕獲地予測が可能となった。

  • 笠松 咲樹 , 中倉 徹紀, 三谷 徹
    原稿種別: 研究論文
    p. 110-115
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は全天球画像データが普及してきている昨今において,その二次元表象の可能性を探る萌芽的研究である。本研究では,撮影した全天球画像データを平面展開して得た画角の異なる写真を対象に,空間認知のしやすさと注目される要素の差異を調査し,異なる画角の写真ごとの空間的印象と注視要素の特徴を明らかにする。その結果,パノラマ図では水平方向の連続性が把握されやすく,円形図では空が把握されやすいことを確認する。また,写真ごとの空間的印象と注視要素の特徴の差異に着目して意図的に表現方法を選択することで,無意識的に捨象していた空間の要素を再認識できる可能性を提示する。

  • 池 翔, 錦澤 滋雄, 村山 武彦, 長澤 康弘
    原稿種別: 研究論文
    p. 116-121
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,地域貢献に資する太陽光発電施設に着目し,それらの取り組みが施設の受容性に及ぼす影響を明らかにした。社会,環境・エネルギー,経済的側面から検討し,対象事例として千葉県匝瑳市飯塚地区を選定した。そして,アンケート調査を実施し,回答の単純集計,クロス分析および重回帰分析を行った。その結果,緊急電源への利用認識が,住民の事業への賛成態度形成に正の効果を及ぼすことが把握できた。また,住民の賛成意識を形成する上位の影響要因は「温室効果ガスの排出抑制」,「災害への対応の強化」,「地域の活性化」であり,パネルオーナーの出資行為に影響する最大の効果要因は「長期の利益へ期待」であることがわかった。

  • 和田 有朗, 安田 恵李奈
    原稿種別: 研究論文
    p. 122-127
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    市民の現在のプラスチック削減への行動や,今後の市民のプラスチック削減への行動意図に影響をおよぼす要因について,アンケート調査とその結果の分析に基づいた考察を行った。 その結果,多くの人が普段からプラスチックごみ削減行動を実践していることがうかがえた。重回帰分析の結果,家庭内でのコミュニケーションが,プラスチックごみ削減の実施度に関連があることを明らかにした。プラスチックごみ削減行動を促進するには,プラスチック製品の使用を控えるための工夫などを家庭内で話すきっかけを作ることが重要と考えられた。さらに,「ごみ問題」「生物の種の減少問題」に関心を持ってもらうことが重要である

  • IPCC 第6 次評価報告書シナリオデータを用いた分析
    坂本 将吾, 富田 基史
    原稿種別: 研究論文
    p. 128-133
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    日本は2050 年カーボンニュートラル(CN)達成を掲げているが,目指すべきCN の態様は定められていない。本研究では,CN 達成に向けた検討に資することを目的に,IPCC 6 次評価報告書シナリオデータベースを用いて,日本の2050 CN 達成時の残余排出量と二酸化炭素(CO2)除去量を分析した。その結果,CN 達成時の残余排出量・CO2除去量について,シナリオ間の幅を定量的に示した。この幅に対応して,CN に至るまでの残余排出量の削減とCO2除去の拡大はシナリオごとに異なる進み方を示しているが,排出削減重視で進むシナリオが大部分を占めており,CO2除去重視のシナリオは限られていることを明らかにした

  • 小野 聡, 木村 道徳
    原稿種別: 研究論文
    p. 134-141
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,豪雪地帯における探索的シナリオプランニング(XSP)を通じた地域的な気候変動適応のプロセスについて示唆を得るため,滋賀県高島市朽木地区を対象に対話を通じた因果ダイアグラムの作成とシミュレーションを通じたプロセスを設計して得られた結果を分析した。その結果,シミュレーションを通じて将来における社会的影響として「追加的公助」を構造化できたことに加えて,共助の活発度や降雪パターン,集住度合いに応じた予測による適応策への示唆を得た。XSP において不確実性を参加者間で共有し,クリティカルな不確実性を同定していく上で,対話とシミュレーションの相互作用を通じたプロセスを設計することが不可欠である。

  • 松本 安生 , 松本 美紀
    原稿種別: 研究論文
    p. 142-147
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    一般市民を対象にしたアンケート調査をもとに,気候変動による被災不安とその規定要因について分析を行った。その結果,他者に対する不安やライフライン断絶の不安が高い一方,自然災害に対する不安は相対的に低い傾向がみられた。また,因子分析から得られた特性不安と状態不安の2 種類の被災不安について,社会経済的要因,地理的要因,認知的要因との関連を検証したところ,性別では男性よりも女性で,世帯人数では2 人以上の回答者で,情報源ではインターネットよりもテレビを情報源とする人などで不安感が強いこと,また,近くに急な山の斜面がある回答者や,気候の変化とその影響を強く認識している人で不安感が強いことが明らかになった

  • 笹田 勝寛, 斉藤 丈士, 山口 創平
    原稿種別: 研究論文
    p. 148-153
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    近年,耐震性能の向上などを目的として過密配筋化した鉄筋コンクリート部材が普及しており,コンクリートの間隙通過性の重要性が認識されるようになったが,一般的なコンクリート工事において最も多用されている軟練りコンクリートの間隙通過性を評価する試験方法は普及していない。そこで,既存試験方法およびその改良方法の適用性を検討するとともに,新たな試験方法を提案し,試作した試験装置によりその適用性を検討した。

  • 村上 健太郎, 張 平星, 福井 亘, 髙林 裕
    原稿種別: 研究論文
    p. 154-159
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    京都盆地の集落に残存する白川石(黒雲母花崗岩)の石積み壁に生育するギフベニシダ(複数地域で絶滅危惧指定されるシダ植物)の生育地特性を調査した。同地区の白川石以外の石積み壁を対照区として比較調査した。その結果,本種は明らかに白川石の石積み壁に偏って記録された。 本種の生育地は,相対的に土壌含水率が低く,天空率は中間的であったが,それらの範囲は狭かった。モルタルで目地がされるなど,修復された調査区では生育確率が低かった。日本の伝統的な石積み壁は稀少シダ植物の保全に寄与できる。本種の保全のためには花崗岩等による石積みを残す必要があり,補修の際に,本種が生育できる余地を残す工夫が必要である。

  • 仲吉 信人, 中山 拓巳
    原稿種別: 研究論文
    p. 160-165
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    将来における暑熱ストレス変化を明らかにするため,現況再現計算および疑似温暖化法を用いて8 月の関東における熱ストレスの将来評価を行った。将来気候の計算は,d4PDF の4℃昇温実験および2℃昇温実験の各4 ケースをメソ領域気象モデルWRF により力学的ダウンスケーリングした。暑熱ストレス指標にWBGT を用いて解析した結果,将来では最も危険な熱ストレスカテゴリーに分類される地域が大幅に増加した。WBGT の将来変化に対する気象要素の寄与率を計算した結果,2℃昇温実験において大手町では放射,熊谷では気温の影響が大きく,4℃昇温実験では大手町,熊谷いずれも気温の影響が最も大きいことが確認された。

  • 本田 裕子, 高橋 正弘
    原稿種別: 研究論文
    p. 166-174
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    長崎県対馬市にのみ生息する絶滅危惧種であるツシマヤマネコの生息を脅かす要因の一つに交通事故が挙げられる。本研究では,対馬市民を対象に実施したアンケート調査結果を用いて,野外での目撃,交通事故対策や自動車の運転に関する認識を,過去の調査結果との比較や居住エリアでの違いから分析した。結果,野外での目撃は増加していること,交通事故対策や自動車の運転について,認知度が増加している項目を確認できた。その一方で,過去の調査結果から変化が見られない項目や居住エリアでの違いも確認できた。交通事故対策の啓発活動としては,これらの分析結果をふまえて,居住エリアでの違いも意識した戦略的な使い分けが必要といえる。

  • 岩見 麻子, 後藤 侑哉, 増原 直樹, 松井 孝典, 川久保 俊
    原稿種別: 研究論文
    p. 175-180
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究ではSDGs に関する話題の動向を把握する方法として,新聞記事に対するテキストマイニングの有用性を検討することを目的とした。具体的には朝日新聞を対象に「SDGs」が含まれる記事を収集し,対象記事の件数や分量の時系列推移を把握するとともに,出現語の関係性の可視化を試みた。その結果,SDGs が採択された当初の20152016 年はSDGs の紹介や全球規模の問題について扱われていたのに対して,2017 年以降はそれらの話題を残しつつ徐々にSDGs の達成に向けて活用が期待される技術や国内の地域レベルの問題,自治体・企業・学校での具体的な事例・取り組みへと話題が変化していったことを明らかにすることができ,SDGs に関する話題の動向を把握する方法として,新聞記事に対するテキストマイニングの有用性を示すことができた

  • 石田 康樹, 佐藤 克己, 髙橋 岩仁, 南山 瑞彦, 森田 弘昭
    原稿種別: 研究論文
    p. 181-186
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    少子高齢化が社会問題となっている昨今,おしりふきなどの衛生製品が介護や子育てで使用され,その使用済み製品の保管や廃棄が負担となっている。このような状況の中,水解性衛生製品は広く普及し,下水道の役割である公衆衛生の向上や生活環境の改善に寄与している。一方で,その製品の水解性が十分ではないという報告がある。これら製品の水解評価試験には,IWSFG とEDANA/INDA で規定した2つの規格があるが,既往の研究から,課題が指摘されている。このため,誰でも簡単に行える新たな水解評価試験方法を提案し,その結果がIWSFG で規定するPAS3 と相関があることを確認するとともに提案する水解評価試験から製品のせん断応力を算定し,その妥当性を確認した。

  • 吉冨 瑠夏, 高瀬 唯
    原稿種別: 研究論文
    p. 187-194
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    自然体験による市民の環境保全に対する意欲の増進が求められている現在,親世代が子ども達に向けて自然体験を教え伝えていくという自然体験の世代間伝承が重要である。本研究では,自然体験の世代間伝承に関する既往研究の知見の頑健性を高めるために,親世代である子育てをしている市民の中で自然体験の伝承を実行する傾向にある集団を明らかにした。全国の子どもがいる市民を対象にオンラインアンケートを行った(n=2,265)。家庭で自然体験の伝承を最も実行している集団は,自然体験の効果を非常に体感している人々であった。地域社会については,未成年時に地域で行われている自然体験活動に参加したことのある人々であった。

  • 太田 裕也, 山下 奈穂, 蛭田 有希, 白川 博章, 谷川 寛樹
    原稿種別: 研究論文
    p. 195-201
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    耐用年数を迎えた都市構造物や気候変動による自然災害の増加によって,都市に蓄積された物質ストックが将来大量に廃棄物として発生することが懸念される。都市構造物ストックの定量化は,将来の新規投入・排出フローの予測や今後の適切な維持管理計画を検討する上で重要な役割を果たす。本研究では,地理情報システムを活用し,日本全国の建築物と社会基盤施設の建設資材ストックを推計し,経時的な物質動態を明らかにした。2020 年の建築物の建設資材ストックは11,800 百万t,社会基盤施設は7,400 百万t と推計された。また,建築物の着工床面積は1 年あたり117 百万m2,滅失床面積は76 百万m2 であった。

  • 佐賀県杵島郡大町町を事例として
    坪井 塑太郎
    原稿種別: 研究論文
    p. 202-207
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は,洪水災害による重複被災に着目し,「被災者」の立場から被害と避難の実態と課題を示すと同時に,「支援者」の立場から,生活復興に向けた体制構築の方法,構造を明らかにすることを目的としたものである。分析の結果,本対象地域においては,1 度目と2 度目の被災の間において居住者の避難行動に明確な変化が見らなかったほか,自力復興に係る再建支出額の増大が見られた。また両災害の間には,新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴う域外からの災害ボランティアの大幅な減少がみられたが,保健福祉部局を含む「行政」,災害ボランティアセンターを運営する「社会福祉協議会」,専門支援系「NPO 等」の三者による情報共有を目的とした被災者支援会議が継続的に開催され,町内に設置された支援拠点を基盤として,被災者支援活動が展開された。

  • 劉 銘, 安藤 奏音, 安原 有紗, 久保 暁子
    原稿種別: 研究論文
    p. 208-213
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    ワーケーションは地方創生の手段の一つとして注目されており,情報発信に関する課題が指摘されている。本研究はワーケーションポータルサイト:地方創生テレワークに掲載された全国のワーケーション施設の紹介文章内容を対象に数量化Ⅲ類とクラスター分析を行い,work, vacation, life 3 側面から発信内容の特徴を整理し,課題を把握した。結果,仕事環境関連の情報に比べ,地域での交流や生活情報に関する情報が充実していない傾向が示された。地方創生の促進においては,地域を特徴づけるアクティビティ活動や生活体験プログラムなど,読み手に地域の特色を印象づける発信をワーケーション施設が行うことが有効な手段であると考えられる。

  • 鴨志田 隼輔, 山本 清龍
    原稿種別: 研究論文
    p. 214-219
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,近年農村風景の荒廃,獣害被害の拡大,不法廃棄等で課題とされている耕作放棄地において,茨城県那珂市を事例として取り上げ,①農地流動化台帳分析を通して農地申請者の耕作意向を把握し,今後離農が示唆される農地においての立地特性を明らかにすること,②農地流動化台帳の個票を用いて調査する意義と課題,耕作放棄の潜在性について考察すること,の2点を目的とした。調査分析の結果,市内農地全域と農地流動化台帳に記載される申請者意向としての潜在的耕作放棄地では売却貸与と主に標高帯における立地特性の連関が明らかとなった。

  • 小林 剛, 万 晟吉, 李 京
    原稿種別: 研究論文
    p. 220-225
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    鉛による表層土壌汚染の浄化方法では、掘削除去が多用され、過剰な対策による環境・経済・社会への負荷が大きいことが懸念されている。本研究では、土壌中鉛の含有量の鉛直分布の実測値を用いて、対策する土壌の掘削深さの違いによって、対策後に残存する健康リスクと、各対策手法がもたらす環境・経済・社会への影響を評価するパラメータを算出し、サステナブルレメディエーション手法を検討した。盛土や舗装のみでも十分であるし、更に50 cm の掘削除去をすれば健康リスクの低減とともに、他の環境負荷や対策費用も半減できることが分かった。詳細な深さ方向の濃度分布の把握が、健康リスクと、環境・経済・社会への影響を低減に有用であることを示せた。

  • 新里 早映, 中島 正裕
    原稿種別: 研究論文
    p. 226-232
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    地域を支える人材の育成に向けて,地域と高校の協働による探究的な学び(地域探究)の実施と運営体制の構築が推進されている。本研究ではアクションリサーチによって,地域探究の授業設計と運営に関する知見を実装的に明らかにすることを目的とした。長野県立Y 高校における地域探究の実践から,地域探究の授業設計においては,生徒の興味に即した活動,楽しさの実感,地域に関する新たな発見を促すことの重要性が示された。運営プロセスにおいては,授業実施前に事前共有の場を設け,講師と教員が授業の方針をすりあわせて連携体制を整えることが必要である。

  • コーディネーターの役割から
    安部 梨杏, 中塚 雅也
    原稿種別: 研究論文
    p. 233-238
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,地域おこし協力隊員と受け入れ地域運営組織の間に生じるコンフリクトと対処をコーディネーターの視点から明らかにし,コーディネートの留意点と技能を提示した。コーディネーターへの聞き取り調査の結果,協力隊活動におけるコンフリクトを4 領域に分けて明示するとともに,その具体的な対処方法を,回避,妥協,順応,協働で分類する理論枠組みにおいて明らかにした。コーディネーターは,中立の立場で双方の意見を聞き,コンフリクト発生の構造をみながら介入方法を考える必要があること,そのために求められる技能は,基本的な対話や情報整理,対処判断能力であることを示した。

  • 小堀 貴子, 山島 有喜, 劉 銘, 山本 清龍
    原稿種別: 研究論文
    p. 239-244
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,日本の国立公園を取り上げ,潜在的利用者が持つ各公園に対する志向と目的地選択との関係性を明らかにすること,利用志向を考慮した国立公園の管理,運営について考察すること,の2点を目的とした。インターネットによるアンケート調査の結果,活動内容を説明する軸として「活動性」「知名度性」「娯楽性」「静養性」の4つの軸があること,利用の志向は【知識体験志向型】,【心身回復志向型】,【原生自然享受型】,【運動志向型】,【観賞志向型】の5つの類型に分類されること,また国立公園の利用志向と訪問意向,資源イメージの関係を明らかにした。

  • 兵庫県三木市の集落を事例に
    松原 茂仁, 中塚 雅也
    原稿種別: 研究論文
    p. 245-250
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,兵庫県三木市の酒米生産集落を事例に,村米制度の継続と農地維持に向けた望ましい集落構造や環境対応を明らかにすることを目的とした。既存アンケートの整理,集落への個別ヒアリング調査の結果,今後の酒米生産農家の現状と後継者不在となる将来が確認される一方,イエの維持には可能性があることを明らかにした。今後の酒米産地の維持には,農業は内部の一部の農家か外部の農業法人が担い,集落はそうした農家と土地持ち非農家と協働しながら,農地水利の防災や動植物環境に配慮し維持するという体制,つまり農業維持と集落維持を分離し,農業を担う農家と農地を委託する住民が役割分担しながら酒米生産地を維持する方向性を示した。

  • 地域環境評価の基礎となるCO2濃度分布の相似性に着目して
    バヌバクタ プリ, 岡村 聖, 髙木 祥太, 伊藤 雅一
    原稿種別: 研究論文
    p. 251-256
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は,東海3 県に開設されたCO2濃度測定局の10 年間の収集データを対象に,南鳥島地点の全球観測値に基づく補正を行ったうえで,CO2濃度分布図を作成し,多地点比較を行った。その結果,1)各地点における夏季のCO2濃度分布図の分布形は経年的に相似していること,このことは,2) 夏季主風向の風速発生頻度の信頼区間によって確認することができることを明らかにした。

報告
  • 對馬 孝治
    原稿種別: 報告
    p. 257-262
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    境川遊水地内で隣接する俣野遊水地と下飯田遊水地においてオオクチバス(Micropterus salmoides)の食性を炭素と窒素の安定同位体比分析を用いて解析した。オオクチバス当歳魚の標準体長は2つの遊水地に差が無かったが,水域の面積の小さい俣野遊水地では,オオクチバスの当歳魚から非当歳魚への生長に伴い窒素安定同位体比が上昇し,プランクトン食性から栄養段階のより上位の生物を捕食する食性へ移行していることが示唆された。下飯田遊水地では小型の当歳魚から大型の非当歳魚まで差が無いことが示唆された。オオクチバスはこれらの水域で当歳魚から成魚まで生育していたことが示唆された。

  • 農業者,発電事業者および地権者の関係性に着目して
    児玉 敬武
    原稿種別: 報告
    p. 263-268
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    太陽光を農業と発電とで共有する営農型太陽光発電事業が増えている。本稿は,事業者の関係性を分析することで,営農型太陽光発電事業が地域社会に貢献しているのか検証することを目的とする。調査には,農業委員会による事業申請についての審議を記録した議事録および電力の固定価格買取制度の認定情報を用いた。分析からは,農業者と発電事業者が地権者との借地契約によって,共同事業に取り組む実態が顕著になった。結論として,営農型太陽光発電事業は,発電事業者による農業者の所在する地区の「外からの参入」という機会を利用しながら継続的な農業経営を可能にして,地域社会に貢献している。

  • 須田 真理, 大野 暁彦
    原稿種別: 報告
    p. 269-274
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では京都市高瀬川五条通から七条通の左岸を対象とし,河岸の占有空間と周辺土地利用の関係を明らかにすることを目的とする。その結果,現在みられる河岸占有は,河岸が土のまま長期間維持された結果であることが明らかになった。その構成は,①実生から育ったとみられる長年残されてきた高木,②祠・番外橋などの周辺住民によるとみられる設置物や果樹などの植栽された中木,③周辺住民によるとみられる植木鉢などの仮設物,さらに④宿泊・飲食施設などによるデッキや枯山水風の庭などの修景施設の4 種が組み合わさったものであることがわかった。

  • 吉野 章, 光成 有香
    原稿種別: 報告
    p. 275-280
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    2017 年にSustainable Brands が米国市民を対象に実施した調査(SB 調査)に倣い,日本人の理想的な暮らし (Good Life) の主要素の優先度を推定した。1,674 名を対象としたWeb アンケートでMax-diff 調査を実施し,SB 調査で抽出された4 つの主要素「適度に質素で健康的な生活」「人や環境とのつながり」「仕事や勉強での自己実現」「裕福さと社会的地位」の優先度を推定した。さらに,その結果を潜在プロファイル分析によって解析し,4 主要素の優先度の分布は,どの主要素を最優先するかで4 パターンに分かれること,「適度に質素で健康的な生活」を最優先するパターンが38%と最多であること,並びにその傾向は若い人,特に1998 年以降に生まれたZ世代に顕著であることがわかった。

  • 粟田 香名子, 上田 萌子
    原稿種別: 報告
    p. 281-286
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    国史跡百舌鳥古墳群13 基の植物相と植生の特徴を明らかにした。植物相調査の結果,12 基の古墳で自生種の割合が60%を超えていた。また,希少種と特定外来生物の双方が確認された。 植生調査の結果,樹林は9 群落2 下位単位に区分され,遷移段階の違いにより4 タイプに分類された。一方,草原は14 群落3 下位単位に区分され,環境条件の違いにより植物社会学上の6 つのクラスに分類された。今後の保全・管理として,希少種の保全と特定外来生物の駆除が必要である。

  • フューチャー・デザインの考えを取り入れた岩手県久慈市での事例
    重 浩一郎, 坂巻 隆史, 西村 修
    原稿種別: 報告
    p. 287-293
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    地域における脱炭素の実現に向けては行政だけでなく地域住民の参画・協力が重要である。本研究では,これまで政策提案などに活用されてきたフューチャー・デザインの考え方を取り入れた住民対話の場をデザインし,参加者の脱炭素に向けた意識についての調査分析を岩手県久慈市において行った。その結果,フューチャー・デザインを取り入れることで参加者から未来志向的なアイデアが出た一方で,家庭ですぐに取り組む行動についての言及は少なかった。また,参加者アンケート調査結果によると,実施後は実施前に比べて家庭のエコチェックで実施してみたいと考える項目が増えるなど意識変容につながる有益な知見を得ることができた。

  • 事業主体と災害リスクの観点から
    金 再奎, 岩川 貴志, 松井 亜紀
    原稿種別: 報告
    p. 294-299
    発行日: 2023/12/08
    公開日: 2023/12/08
    会議録・要旨集 フリー

    滋賀県における太陽光発電による固定価格買取制度(FIT)認定事業を対象に,発電施設の所在地とそれを所有する事業者の所在地との関係性や,自然災害発生時の活用可能性を分析した。脱炭素社会の実現のために,再生可能エネルギーの大幅導入が不可欠である一方,その活用は,資金力で勝る都市部の事業者らが主体となって大規模な設備導入を行い,その収益が都市部へと吸収されているケースが多い。また,施設の多くが洪水や土砂災害リスクの高い立地特性を有している現状が明らかとなった。再生可能エネルギーの導入にあたっては,単なる収益やCO2排出量の削減だけではなく,周辺地域の地理的特性や住民への配慮,地元にとってのメリットといった「地域立脚性」を十分に考慮することが必要である。

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