環境情報科学論文集
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研究論文
  • 熊本県小国町のわいた地熱発電所を事例として
    村瀬 智香, 小嶋 大造, 安藤 光義
    p. 1-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    農山村地域では,豊富な資源を活用した再エネ開発の進展が期待される一方で,開発に対する地域の主体性の不足が課題となっている。本研究は,熊本県小国町のわいた地熱発電所を事例とし,自治体,住民および開発事業者へのインタビュー調査を通じて,地域貢献型地熱発電事業のスキームおよび自治体と住民の役割を明らかにした。同事例では,地区住民出資の合同会社が事業主体となり,発電所の運営管理を外部事業者に委託するスキームのもとで,住民が意思決定権や売電収益の使途決定権を確保している。また,行政は二つの協議体を活用して事業者と住民の利害調整を行うことで,便益の地域還元と開発に対する地域受容性の向上を実現している。
  • 谷下 雅義, 玄田 理戸
    p. 7-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
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    本研究では,太平洋ベルト地帯を中心とする14都府県の市区町村における大気汚染濃度とレセプト(診療報酬明細書)データに基づく呼吸器疾患との関係について,気象・自然条件や社会経済変数そして空間相関を考慮して分析した。その結果,年平均のPM2.5濃度が高いほど,入院および外来患者の気管支拡張剤が多く使用されていること,その他の呼吸器官用薬については大気汚染濃度との関係はみられないことなどを明らかにした。
  • アスベスト対策への活用
    豊永 悟史
    p. 13-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    アスベスト対策のための自治体による解体・改修工事への立入検査に活用することを最終的な目的として,解体・改修業者から報告される工事情報に対して群集生態学的指標を試験的に適用した特性解析を行った。その結果,解体業者では工事を実施する建物の種類が,改修業者では工事を実施する地理的な範囲が工事件数の増減と強く関連していることが示され,異なる特性を有していることが示唆された。また,解体業者間のニッチ重複度指数は法令違反と関連している可能性が示された。
  • 山﨑 慶太, 平野 勇二郎, 横田 樹広, 豊田 知世
    p. 19-26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    木質バイオマス熱電供給(CHP)15施設の調査により,川下の発電所から,川中の燃料工場,川上の森林にまで遡り作成した資金フローから,地域循環システム(LCS)の経済循環効果を表す地域内乗数LM4と経済的価値である丸太1tあたりの域内所得を評価し,ペレット,チップで比較した。発電所での融資返済が地域内金融で,燃料工場での原木購入が概ね域内であれば,LCSのLM4は2.07以上で経済循環に貢献する。域内所得は,チップ利用に比べてペレット利用小型LCSが高いが,川上での持続可能な丸太供給の担保が条件で,川下でのCHP熱供給とマッチングする熱需要の出口設計が,環境的価値とシナジー効果を得る条件である。
  • 小林 昭裕
    p. 27-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,山岳宗教地である戸隠を対象とし,山岳信仰対象に示された宗教的解釈,信仰対象への行動・操作等の働きかけ,解釈と働きかけから信仰者が得る利益,相互の関連に着眼し,戸隠の文化的景観の形成過程を史的観点から考察した。文化的景観の形成過程を捉える概念モデルとして,史的変遷の文脈(A対象,B解釈,C行為,D主体,E御利益・功徳)とこれらの関連性に着眼した。概念モデルを通じ,山岳信仰地が人々の行為や意識が積み重ねられた場であり,宗教的由来,寺院制度,人々の懸念を払う仕組み,宗教的価値の伝搬を強化した工夫,これらを主導した僧侶,修験者,神官等の人々の意志や行為が反映されることが示された。
  • 佐々木 章晴
    p. 33-38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
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    石狩川中下流域は,平坦地や台地は湿原から農耕地へ,山地は自然林から人工林や二次林に変化した。また社会情勢の変化によって,農耕地の管理は変化した。その結果,流域土壌は大きく変化し,河川や沿岸域の水質や農業生産性に変化を与えていることが予想される。そこで本研究では,当該流域土壌の現状の実態を把握する調査を行った。水系水質など環境保全に視点を置く場合は土壌炭素含有率を,農業生産性に視点を置く場合は土壌化学性を,それぞれ注目する必要があると考えられた。
  • グリーンボンド・ブルーボンド・サステナビリティボンドの比較研究
    有賀 健高, 篠村 夏椰
    p. 39-44
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    環境問題への貢献を目的に発行されるグリーンボンド(GB)とブルーボンド(BB),環境問題に加えて他の社会問題も対象とするサステナビリティボンド(SB)に対する一般投資家の投資意欲を仮想評価法で推計した。環境問題を重視する投資家は,より低利回りでもGBを選好する傾向があった。一方,BBはまだ認知度が低く,高利回りを要したが,海洋環境問題への関心が高い投資家は,BBへの投資に対しても積極的であった。環境債の発行時には,投資家に債券の中身をより詳細に伝えることの重要性が示唆された。今後,環境債の市場を拡大させていくためには,特定の環境問題に焦点を当てた債券発行とそのためのルール整備が求められている。
  • 松本 安生
    p. 45-50
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    視覚化された気候変動に関するデータの提供が,市民の気候変動問題の認知と不安に与える影響を明らかにするため,無作為抽出した市民2,000人を対象に,一般的なグラフ形式の情報提供(統制群)と視覚化されたデータの情報提供(実験群)を行った。事前及び事後調査の結果から,統制群では気候変動問題の認知と不安で統計的に有意な変化はみられなかったが,実験群では,気候の変化に対する認知が有意に増加した。また,気候の変化に対する認知の変化を従属変数,情報提供への評価を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った結果,認知の変化にはデザインの親しみやすさや文章の読みやすさが重要であることが示された。
  • 平原 俊
    p. 51-56
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    ラムサール条約湿地におけるエコツーリズムの計画から実施に至るまでの過程を明らかにすることを目的として,北海道網走市・小清水町の濤沸湖について事例研究を行った。濤沸湖では,2005年のラムサール条約登録以降,エコツーリズムの導入に向けて検討が続けられており,2010年代前半の認定ガイドの育成事業は頓挫したものの,近年になってカヤックによる野鳥のモニタリングツアーが開始している。エコツーリズム実施の基盤となっていたのは,①拠点施設の建設,②協議組織の継続的な設置,③保全・利用ルールの策定であり,いずれもラムサール条約登録を契機に実現したものであったが,担い手となるガイドの確保には課題も見られた。
  • 清川 梢太, 藤原 宣夫
    p. 57-62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,代表的な街路樹の5樹種(イチョウ,クスノキ,ソメイヨシノ,ケヤキ,ハナミズキ)について,更新周期を30年と50年に設定し,成長予測に基づき150年間でのライフサイクルコスト(LCC)と多面的機能の貨幣価値(トータルベネフィット)を算出した。そのうえで,費用対効果の観点から街路樹の最適な更新周期を検討した。費用対効果は更新周期を50年に設定したケヤキの0.80が最も高かった。また,すべての樹種において,更新周期を50年に設定した場合の方が,30年に設定した場合に比べて費用対効果は高くなった。このことから,十分な植栽空間がある場合,更新周期を長めに設定し,大きく育てることが有利であることが示された。
  • 松井 孝典, 渡辺 舞, 今井 隼人, 芳賀 智宏, ,増原 直樹, 川久保 俊
    p. 63-70
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    地球と社会の限界を考慮して,安全で公正な活動空間 (SJOS) 内で持続可能な社会を実現するには,ローカルレベルで SJOS のパフォーマンスを評価することが重要である。本研究では,SJOSのパフォーマンスを評価するための都道府県スケールの指標データベースを構築し,グローバルの閾値に基づいてプラネタリーバウンダリーの超過とソーシャルバウンダリーの不足の評価の試行を行なった。この結果,CO2排出量とエコロジカル・フットプリントが超過しつつ,ほぼすべての都道府県で社会的基盤が整備されている傾向が見られた。今回の分析を通じた今後の研究課題として,環境指標のデータのギャップの解消とSJOS指標のローカライズの必要性を示した。
  • 定住自立圏と地域循環共生圏の比較
    河越 信二郎
    p. 71-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本稿では,都市と農村双方の影響を及ぼす範囲を捉えた圏域構想である「定住自立圏」と「地域循環共生圏」について対比分析を行い,その特徴及び関係性について明らかにすることを試みた。その結果,前者が農村部へ都市機能の供給の側面から捉えた構想であることに対して,後者は農村部の自然資源の影響範囲を捉えた構想であるという特徴が確認された。また,前者が都市への集約化を目指すものであるのに対して,後者は分散化を目指すという対照的な面があること,時代を経るにつれて両構想の捉える領域は接近しつつあることが明らかになった。
  • 土井 和希, 高橋 岩仁, 佐藤 克己, 南山 瑞彦, 森田 弘昭
    p. 77-82
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    塩分含有排水は活性汚泥処理に影響を与えるものの,塩分で十分馴致を行うことにより,有機物処理が可能であると考えられる。本研究では,活性汚泥による高濃度塩分排水処理を目的に,塩分で馴致した活性汚泥を用いて高濃度塩分含有排水処理およびその菌叢の分析を行った。その結果,ある一定の期間で塩分濃度3%まで馴致した活性汚泥は馴致していない活性汚泥に比べて処理能力が高く,塩分濃度0%と同等の有機物除去能力を示した。また,塩分濃度3%の活性汚泥と塩分を添加していない活性汚泥の菌叢を比較した結果,高濃度塩分環境下でも排水処理を行うことのできる可能性がある細菌が確認できた。
  • 杉山 雄
    p. 83-90
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    環境問題など複雑化した諸問題に対応するには「質の高い討議」が広く行われる必要がある。討議の発話を対象にした研究では討議の質指標DQIが用いられることが多いが、国内事例への適用には課題も存在する。そこで本研究ではまずこれらの課題に対応するための方法論の提示を行った。その上で、事例研究を通じて、質の高い討議の生成契機となる「発話」について、因子分析の手法でその特徴づけを試みた。その結果、これらの「発話」には相手の気持ちへの配慮や共感、メンツに気を配るなどコミュニケーションの維持を重視する特徴のあることが示唆された。今後さらなる事例の積み重ねが必要だが、今回、その方法論を提示することができた。
  • 質問紙実験による検証
    森下 陽平, 甲斐田 直子, 甲斐田 幸佐, 近井 学, 佐藤 洋
    p. 91-96
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,騒音源公共施設に関する情報提供が,近隣住民の音に対する印象や施設受容度に及ぼす影響を調べることであった。東京都内在住の成人(有効回答数1,814)に対して質問紙調査を行った。調査では,騒音公共施設(消防署・公園)の役割や音発生の必然性・意義を説明する「介入群」と,説明を行わない「統制群」の比較を行った。従属変数として,「音の印象」および「施設受容度」を設定した。分析の結果,介入群では統制群と比較して,施設受容度が高くなることが分かった。また,情報提供は,公共施設が発する音の印象を改善することが分かった。これらの結果は,住民の騒音源公共施設の受容度を上げるためには,音の意義や必要性の説明が有効であることを示している。
  • 村上 健太郎, 佐藤 斗満, 畑田 昂大
    p. 97-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    北海道室蘭市の輪西地区において,日本固有の海崖植物ラセイタソウ(Boehmeria splitgerbera)の二次的生育地となりうる擁壁の環境条件を検討した。本種は36箇所の擁壁のうち10箇所で観察され,このうち,6箇所はコンクリートブロック製であった。擁壁上の群落から海岸線までの最大距離は713.7 m(平均375.3m, 標準偏差193.1)であった。Welchのt検定や決定木分析等の結果から,ラセイタソウの生育には,海岸線までの距離が最も強く影響し,これに次いで全天空率や海崖からの距離も影響すると考えられた。これらのことから,海岸・海崖に近い擁壁はラセイタソウなどの海崖植物の二次的な生育地として活用でき,その際には環境要因として全天空率に配慮すべきと結論づけられた。
  • 北海道下川町を事例に
    高木 超
    p. 103-108
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    持続可能な開発目標(SDGs)は,国内の自治体で行政運営のキーワードとして認識され,組織の最上位計画である総合計画にSDGsを反映した自治体も数多く見られる.一方で, 具体的な活用方法が示されていないSDGsを,総合計画に反映する方法は,いかにして考案されたのだろうか.本研究では,北海道下川町を事例として,当時の関係者への半構造化インタビューを実施し,政府学習の枠組みを用いて分析した.その結果,SDGsに関する理論知を町職員が主体的に獲得し,自身の経験知と結びつけることで,総合計画への具体的な反映方法を考案していたことが明らかになった.
  • 栗島 英明, 羽山 富大
    p. 109-114
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,日本で初めてゼロカーボンパークに登録された乗鞍高原において,宿泊施設の脱炭素化に関する取り組み状況と,そうした取り組みに対する潜在需要の評価を行った。乗鞍高原の多くの宿泊施設は,脱炭素化に向けた取り組みを行っているが,後継者不足などにより,取り組みを加速させづらい状況となっていた。脱炭素化に対する需要評価では,気候変動への意識が高く,アウトドアアクティビティへの興味があり,乗鞍高原への訪問経験がある回答者が脱炭素化の取り組みを高く評価した。これは乗鞍高原の観光客の傾向と一致しており,脱炭素化の取り組みを進めることは,観光客の需要と一致していることが明らかとなった。
  • 田中 邦明
    p. 115-120
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    富栄養化湖沼の北海道渡島大沼の水質経年変動について過去1984〜2005年と最近2009〜2021年で比較分析した結果,COD75%値の経年変動の主要因は,過去では流域の肉用牛飼養頭数,最近では冬季最深積雪であった。2009年以降の変化は,最近の畜産負荷削減対策に加え,気候変動による冬季最深積雪の経年変動の増幅が融雪水による湖水希釈効果を介してCOD値の経年変動に寄与したものと推定された。今後の大沼のCOD環境基準を満たすための富栄養化抑制対策として,前年冬の最深積雪に応じた流域内での堆肥施用上限量を算出し,畜産経営体に削減目標を提示する畜産負荷調整システムの導入が提案された。
  • 松平 理弥, 中澤 公伯
    p. 121-127
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,都心商業地域を対象に,ビジュアルプログラミングによりBIMとGISを連携させることによって,都市空間の日射量評価とパラメトリックスタディにより良好な日照環境となる都市モデルを模索したものである。GISとBIMの連携によって,解析結果を手軽に可視化することが可能となり,最適な都市モデルを目指すうえでのフィードバックを行うことができた。またDynamoを用いることによって,地理空間情報から階層別の広域的な日射量評価モデルを迅速に作成することができ,繰り返しのフィードバックによってパラメトリックスタディを実現した。
  • 日本国内航空会社マイレージ会員調査にもとづく検証
    小濱 幸平, 甲斐田 直子
    p. 128-133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,日本の航空利用者における航空移動に対する環境負荷認識の実態を把握し,環境負荷認識と相殺行動・主観的幸福感との関係性を明らかにすることであった。国内航空会社マイレージ会員を対象とした質問紙調査データ解析(有効回答1,624)の結果,航空環境負荷認識は,生活場面・移動場面における環境配慮行動,向社会行動,カーボンオフセット支払い意思と正の関係性にあり,向社会行動およびカーボンオフセット支払い意思は,主観的幸福感に対して正に関係していることが認められた。本研究では,これらの結果をもとに,航空移動の持続性を実現するための直接的・代替的方策について考察した。
  • 日本・中国を事例に
    劉 迅, 甲斐田 直子
    p. 134-140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、日本および中国の子どもにおける気候変動緩和関連の環境配慮行動(PEB)の傾向と規定因を検証した。質問紙調査データ分析の結果、両国において、変化への準備と家庭における子どもの影響力がPEBと正に関係していることが認められた。一方で、心理的障壁は中国においてのみPEBと負に関係していた。年齢とPEBの関係は両国で非線形傾向であり、日本では逆U字型、中国ではU字型の関係性が示唆される。これらの知見より、子どもの意識・態度を向上させ、環境配慮行動を身につけるためには、学校および家庭での環境教育が重要である。
  • 芳賀 智宏, 増田 惟吹, 東出 天舞音, 三井 健矢, 堀 啓子, 松村 悠子, 山口 容平, 松井 孝典, 石濱 史子, 臼田 裕一郎, ...
    p. 141-147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    脱炭素の実現に向けて保全や地域社会とコンフリクトを生じない太陽光発電の導入を促進する必要がある.本研究では,再生可能エネルギーの導入拡大に向けて,太陽光発電のポテンシャルと実際の導入量の空間分布のギャップを明らかにすることを目的とした.結果からは,全国の発電ポテンシャルがあるメッシュ(500m)の98.5%では導入が進んでいないことが明らかになった.導入済みのメッシュでは,REPOSで推計されたポテンシャルの1.9倍の設備容量が導入されていた.ポテンシャルがゼロと推計されているメッシュに導入された設備容量のうち45.0%は森林を開発して建設されたものであった.考察では今後各地で進む促進区域の設定の際の留意点を議論した.
  • 東京都江戸川区を事例として
    坪井 塑太郎
    p. 148-153
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,東京都江戸川区を対象として,従来の河川・水路が親水公園として整備される過程に着目し「水利用の機能的変化」と「地域の対応」を一体的に把握・検討を行ったものである。本地域の河川・水路は,旧来,灌漑や下肥輸送などの農業利用が主であったが,1960年代以降,都市化に伴う灌漑用水路の埋立等に伴い水域が減少した。下水道整備の遅れから残存河川は一時期,激しい汚濁を経験したが,その後,環境計画の一環として親水施設整備が行われた本地域では一級河川が公共溝渠に指定変更されることで親水公園の通水が行われている。近年では環境利用に資する水資源管理の観点から環境用水の制度化などの新たな対応が要されている。
  • 長野県を事例にして
    北村 崚之輔, 錦澤 滋雄, 村山 武彦, 長澤 康弘
    p. 154-159
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    ゾーニングにおける促進区域は再エネ導入を進めるエリアであるが,促進区域の基準を設定する都道府県の中には厳格な基準を設けているところもある。促進区域が十分に設定できない場合,炭素中立社会の実現が困難となる可能性がある。本稿では,環境紛争が多く県基準が厳格と考えられる長野県を事例とし,県内市町村が現行の県基準下で使用電力を全て再エネ(本研究では太陽光発電に限定した)で賄う「再エネ100%」が可能か地理情報システム(GIS)を用いて検討した。その結果,8割以上の自治体で達成可能であり,達成困難な自治体で県基準緩和等のシナリオを設定した結果,防災や森林に関する基準の緩和や,屋根置き太陽光の設置を増やすことで再エネ100%を達成できることがわかった。
  • マザーレイクゴールズ(MLGs)を事例として
    平山 奈央子, 法理 樹里, 佐藤 祐一
    p. 160-165
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    琵琶湖流域における自然環境の保全や利活用により持続可能社会を目指すためのマザーレイクゴールズ(MLGs)が策定され,多様な主体による取組が行われている。本研究では,滋賀県民を対象としたアンケート調査を実施し,個人特性が環境配慮行動に与える影響について共分散構造分析によって検証した。その結果,i)若年群と環境保全の重要度が高い群では行動直結型の傾向が意欲を介さずに直接的に行動に繋がっていること,ii)女性と若年群では熟慮型の傾向が行動に影響を与えていること,などが示唆された。
  • 高橋 正弘
    p. 166-172
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,長崎県対馬市の住民を対象に実施したアンケートの結果から,対馬市のみに生息する希少種のツシマヤマネコの保護に向けた参加の意欲はどのように高くなるかについて探索的な分析を行ったものである。二項ロジスティック回帰分析の試みにより,行動への参加意欲は,「生体の目撃」「地域の象徴としての認知」「保護に対する心配」「保護に対する期待」「環境問題への関心」「今後の生息数の期待」「野生復帰事業への賛意」によって高くなり,またクロス集計によって参加意欲の高い住民が要請する環境教育の方法が推察できることを示した。
  • 尾崎 平, 西川 颯馬
    p. 173-178
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,野球のクラブ活動時の熱中症の実態を明らかにするために,体育会野球部の部員を対象に,夏季の21日間(ただし休息日や試合日など調査対象外の期間を含む)を対象に,熱中症に対する意識調査と熱中症の症状の有無,クラブ活動中の対処行動の有無,生活行動の内容の確認の実態調査を行った。その結果,熱中症に関するリスク認知や行動意図は高い傾向にあったが,それでも熱中症の症状が確認された。ロジスティック回帰分析の結果,クラブ活動時の熱中症の症状に関して,当日の体調,WBGT,連続活動日数,睡眠時間が影響していることを示した。
  • 後藤 忍, 佐藤 亮介
    p. 179-184
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    緩効性肥料のプラスチック被膜殻に注目し,福島県内の水田を対象に,土壌における残留状況や排水における流出状況を調査・分析するとともに,流出抑制対策を検討した。その結果,次のような点が明らかになった。1)延べ85か所の土壌調査スポットの中で,プラスチック被膜殻は43スポット(51%)で確認された。2)土壌深度ごとでは,深度0~10 cmで51個(91%),10~20 cmで5個(9%)のプラスチック被膜殻が確認された。3)流出抑制対策として浅水代かきを行った農家の圃場の平均捕集粒数(個/日)は15未満だったのに対し,対策をしなかった農家では代かき後に100を超えるなど多かった。
  • 大阪府内の駅前広場の事例
    李 星宇, 高柳 幸奈, 鍋島 美奈子, 西岡 真稔
    p. 185-190
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、日除けとミスト噴霧装置が複合設置された駅前クールスポットの暑熱緩和効果を評価することを目的とする。WBGTを用いて、日除けとミスト装置が設置されたクールスポットを比較し順位付けする方法を提案した。大阪府内の3地点で現地測定を行い、暑熱緩和措置の有無によるWBGT差を分析した。また、大阪管区気象台のWBGT観測値を基準値とする評価手法を提案し、3地点の異なる日時に測定されたWBGT値を相対化して順位付けを可能とした。
  • 包 薩日娜, 田中 拓弥, 舘野 隆之輔, 徳地 直子
    p. 191-196
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,近畿地方における72の里山保全活動団体を事例として,団体の実態を把握するとともに,団体運営主体者の満足度を検討した。また,団体運営主体者の団体全体への総合満足度と今後団体を持続させたい意識の関係性を明らかにした。その結果,多くの団体運営主体者と団体スタッフの年齢層が高かった。また,運営主体者の団体運営の総合満足度について,「満足している」が7割を占め,それが団体を持続させたい意識と正の相関があった。CSポートフォリオ分析から団体運営主体者の総合満足度と団体運営にかかわる様々な項目との関係性を検討した。
  • 兵庫県の過疎地域を事例として
    谷川 智穂, 中塚 雅也, 岡久 花衣
    p. 197-202
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    日本の農村地域では人口減少が課題となっているが,一方で,移住者も増加しており,その移住者による起業も増加している。本稿では,過疎地域・一部過疎地域に指定される市町における移住起業について,GISを用いた空間的な視点から,その立地条件を分析した。その結果,過疎地域においても,中心地では移住者による起業が発生しており,また,どの業種でも起業が発生していた。一方で,過疎地域の中でも,より条件不利な周辺地域においても起業が生じており,業種別で見ると,宿泊業や飲食サービス業が含まれており,それぞれの業種により特徴があることが明らかになった。
  • 紫外線強度と土地被覆形態の関係性
    重田 祥範
    p. 203-208
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/21
    会議録・要旨集 フリー
    様々な街区形態が存在する神戸・阪神地域の日常生活場面を対象に,樹木や構造物の配置,土地被覆形態などの街区構成の違いに着目して,多地点において紫外線の同時観測を実施した.その結果,17:00~7:00は観測地点ごとの紫外線強度の偏差は大きくなかった(-0.5~0.5mW/cm²)が,10:00~14:00においては観測地点ごとの紫外線強度の偏差が-3.0~2.0mW/cm²と大きくなり,観測地点による紫外線強度の差が顕著であった.一方で,紫外線偏差の大小は太陽高度が関係しているため,両者の関係性を明らかにする必要がある.そこで相関分析をおこなうことにした.その結果,日最大紫外線偏差と太陽高度のあいだには正の有意な相関が認められた(r = 0.74).
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