抄録
1982年国連海洋法条約(UNCLOS)の採択による海の管轄権の拡大と急激な開発の副作用又は災害を原因とする、沿岸域での環境悪化は沿岸国に新しい沿岸域管理概念を求めている。特に、1992年UNCEDのリオ地球サミットの成果として出されたアジェンダ21の17章では、排他的経済水域を含む海洋・沿岸域の持続可能な開発のために、統合的な海洋及び沿岸域管理の導入を明記し、各沿岸国の責任下に統合的な管理計画とそれを実現させる法制度の整備を求めている。本稿は、日本、韓国、中国の3カ国において沿岸域管理体系を分析し、日本の海岸法、韓国の沿岸管理法、中国の海域使用管理法上の利害関係者構成という観点からその特徴を比較分析した。沿岸域行政体制においては、各国独自の統合的要素が反映されていることが分かった。また、利害関係者構成の分析結果、日本海岸法では都道府県に管理権限が集中されている反面、韓国沿岸管理法では海洋水産部中心の管理体制が構築されていて、中国海域使用管理法では多数の中央政府組織が関連されていることが明らかになった。