抄録
本研究では、中国上海市の里弄住宅地の居住者を対象として、水道水利用の評価や砿泉水購買行動の実態を把握し、今後の中国の都市における生活用水利用の課題を検討した。その結果、水道水の「味覚」は取水場の移設や排出規制による取水源の河川水質の改善に伴い、近年では「良い」評価が得られており、また使用における安全認識が高いことが明らかになった。しかし一方で、居住者の多くは砿泉水を定期的に購入しており、水の購入が習慣化していることが示された。現在では、市販される砿泉水の種類も多い反面、小型のペットボトルの回収(リサイクル)機構が不充分であり、新たなごみ問題の誘発が懸念されることから、、社会的啓蒙等による対応が必要であると考えられる。また、近年の急速な都市開発に伴い水需要が急増しており、効率的な利用と水資源確保に関する将来展望の検討が必要であることが示唆された。