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鎌倉市の神戸川流域を事例に谷戸の谷底と谷壁の隣接部位である谷底部周縁の1950年代から現在への総延長と、谷底と谷壁の景観の組み合わせの変化を把握した。その結果、地形改変により谷底部周縁の大半が消失したが、既に都市化が進行した地域の消失は少なかった。かつての谷戸景観は谷底に水田や畑、谷壁に樹林地の組み合わせが優占し、谷壁に茅場としての草地もあり、また市街地の組み合わせはそれほど多くなかった。現在は都市化、耕作放棄によってかつて優占した組み合わせはほぼ消滅し、様々な遷移段階にある組み合わせが成立していた。生態的に質の高い谷底部周縁を保つには過去の谷底と谷壁の組み合わせを考慮した対策が重要である。