日光国立公園の戦場ヶ原湿原シカ侵入防止柵には,柵を設置できなかった7箇所の開放部がある。これらの開放部から多くのシカが侵入すると,湿原を保全するという柵の機能が失われてしまう。本論文は,2006年から実施された開放部における侵入防止対策の実施過程を整理し,対策前後のシカの侵入状況から対策の有効性を評価したものである。その結果,河川における侵入防止ネット,道路におけるグレーチング設置と超音波装置設置の3つの対策がそれぞれ有効な対策であったことがわかった。この結果は,他の大規模なシカ侵入防止柵を検討する際に参考となると考えられる。